長屋茶房・天真庵

「押上」にある築60年の長屋を改装して
「長屋茶房・天真庵」を建築。
一階がカフェ、2階がギャラリー。

トムさんの追悼展

2011-10-22 08:15:07 | Weblog
今日と明日、やる。

昨日は前夜祭。ろうけつ染めの作家、野村富造さんが、3月19日に
昇華された。生前から「死ぬまでやらせてな」といわれ、「ええよ」
と約束していた。3月のはじめに、念願のギャラリーをアトリエに併設し、
昔よく京都のジャズ喫茶においてあったJBLのごっつ大きなスピーカで、
大好きなジャズを聴いていたらしいけど、わずか20日間で、天国へ引っ越された。
「いらち」な人でもあった。

池袋の天真庵で、南條先生の寒山拾得をやっている時、京都の陶芸家が
野村さんをつれてきはった。陶芸家も代々絵かきの家系で、自然や草木などを
さらさらと気負いなく描いたけど、野村さんの絵も、ひとをにこっと、させるような
絵だった。そんな縁でそれから毎年秋に天真庵で「染めもん展」をやることになった。

京都がいやになって東京に移り住み、しばらく上洛してなかったけど、ひょんなことから、毎年何度も京都にいくようになった。
西陣界隈を散策するおもろさを教えてもらったのも、トムさんのお陰だ。

遺作が二階に並んだ。彼のろうけつ染めのネクタイは、ぼくの戦闘モード
の時によく結んだ。紺色のスーツに、よく似合う。普段はすこし派手かな、
と遠慮しがちな気分になるが、「よし」と気合がはった時は、いつもそれを
身につけて武装した。不思議なものだ。今の仕事になって、スーツもネクタイもそれを
入れていたタンスも処分したけど、そのネクタイは何枚か残している。
5年くらい前に、着物と袴をつくってもらった。「これは、ぼくが煎茶の
正教授になった時にきて、玉露をいれさせてもらうわ」と約束したものだ。
来年の春に、それを着て、家元の前で玉露を入れる予定にしている。一度
上洛して、「献茶」をさせていただこう。

昨日は、追悼コンサート。昨年と同様、かよちゃんがオーボエを演奏してくれた。
トムさんはジャズも好きだったけど、クラシック、なかでもとりわけオーボエが
好きだった。お母様がやっていたらしい。音楽は人間の悲しさを表現したものだが、
そこが琴線に触れるというか、生きている命と死んでいった命の波動を共鳴させる
ようなものがある。だからぜったいに、ライブがいい。
昨日は「天国の野村さんにささげる曲です」と、ニールセンのロマンスを
演奏してくれた。すこしさみしい秋雨が涙雨に感じられ、こころに染みた。
「ぼくが死んだ時は、シューマンの3つのロマンスにしてくれる」とかよちゃん
に頼んだ。

今日と明日、14時から20時まで、「追悼展」
時間が、池袋時代と変わっていないのが、とむさん流。
やはり「いらち」な性分なのだろう。気骨のある京都人が
またひとりいなくなった。鎮魂。