こんにちは
小野派一刀流免許皆伝小平次です
多忙につきまた時間が開いてしまいました
その間、コロナのことで議論記事なども書いていましたので、ようやくいつも通りの記事投稿をしたいと思います
さて、タクシードライバー日記、前回、無事に「地理試験」にも合格、いよいよ「乗務研修」です
研修、とは言っても、実際に一人で営業車に乗り、お客様を乗せお金を貰う、実質的にはデビューです
「初めての女」
などと、ちょっと艶めかしいタイトルですが、要は初めて乗せたお客様が女性だった、ということですww
では、どうぞ
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乗務研修初日、朝7時、おれと田村は緊張の面持ちで、本社営業所に出勤した。まずは点呼である。
『お待ちどおさまでした』『ドアを閉めて宜しいですか』『シートベルトをお願いします』『どちらまでですか』『目的地に着きました』『ありがとうございました、領収書をどうぞ』『また、〇〇タクシーをご利用下さい』
座学研修中、何度も言わされた決まり文句を、出庫時には、事務方の上司を前にして必ず言わなくてはならない。
その後アルコール検知器に息を吹き、数値を確認、上司から「乗務員証」「運行記録用のカード」、手書きで記載する「運行記録書」、最後に車のキーを受け取り、指定された営業車へと向かう、そこから出庫前点検、タイヤの空気圧、オイルの残量や汚れのチェック、一通りの点検を終え、いよいよ外へと出る。
おれはかなり緊張していた。東京で仕事をしていたこともあるから、地方から出て来た連中に比べれば、多少は道は知っているし、方向感覚もある程度はある。地理試験にも合格していたが、そんなものは実際の路上では何の役にも立たない。デビューしたてのドライバーの大半は、道など知らないのだ。
『申し訳ございません、まだ経験が浅いもので、道を教えていただけないでしょうか』
新人の内は、こう言ってお客に道を教われ、そう指導された。その上、ナビは、客から入れてくれと言われるまで使うなと言うのだ。こちらから「ナビを使わせてください」と言って、万一ナビが遠回りしたりしたら、クレームの元になるからだ。では、客も道を知らなかったらどうするのだ?その場合、ドライバーがみんな持っている「タクシー虎の巻」という詳細地図を見て行け、というのだ。おれが客だったら、タクシードライバーが道が分からない、と言って、いきなり地図広げたらびっくりするだろう、そんなことをあれこれ考えてしまい、緊張していたのだ。
この日は日曜日、都心のオフィス街に人はほとんどいない。教習所のホスト上がりの教官から言われていた。
『土日は人の出も遅い、まずは郊外を流し、徐々に繁華街に入るのがいい』
また、本社の研修で、下品なしゃべり方をする教官からは、
『とにかく銀座を中心に動け、銀座にはあちこちから人が来る、道を覚える早道だ』
ドライバーはそれぞれ、自分なりの走り方がある、だがおれはまだ新人、この教えを守り、まずは郊外、世田谷あたりを流し、その後徐々に北上、銀座を目指そう、そう考えまずは明治通りから国道246へと出た。
そうそう、本社の下品な教官に言われるまでもなく、おれは銀座を中心に走ろうと思っていた。以前、仕事で良く行っていたこともあったし、何より華やかで明るい街だ。新宿や渋谷、六本木のような如何わしさも無い、そう、大人の街だ。おれは銀座と言う街が好きだったのだ。
渋谷駅周辺から、大橋の交差点、246の高架下を山手通りが走っている、このまま国道を南下しても面白くない、おれは山手通りに下りることにした。
山手通りへ旋回しながら降りて行くと、左に立っていた若い女が、おれの車に向かって手を上げた。
『きゃ、きゃ、客だ!』
おれの緊張がさらに高まる、だが、そんなことを悟られないよう、努めて冷静を装い車を停め、ドアのレバーをゆっくりと引いた。
『お待ちどおさました』
女が乗り込んでくる。
『ドアを閉めても宜しいですか?』
『あ、はい』
ゆっくりとドアレバーを降ろし、最後にバタンと閉める。
『どちらまでですか?』
『渋谷駅までお願いします』
えっ!
渋谷駅は今通って来た、おれの感覚では逆方向だ、どうしよう。
『申し訳ございません、まだ経験が浅いもので、渋谷駅の位置はわかるのですが、ここからですとどのように行けば良いか、教えていただけないでしょうか』
『あ、それでしたらこのまま山手通りまで下りて左折して下さい、そうするとすぐにまた246に乗れますので』
そうだったのか! 知らなかった。渋谷にはバンドの練習で以前よく車で来ていたが、全く知らなかった。
女の言う通り、山手通りまで下り左折、直ぐに左に曲がる道があり、そこを上れば再び246、渋谷駅方向の車線に入れる。ここからはもう大丈夫だ、渋谷駅までは何度も来ている。
無事に渋谷駅前に到着、料金はワンメーター、710円(当時)だ。千円札を受け取り、釣銭を渡す。
『ありがとうございました』
女が降りる、ドアを閉める…
『ぷっはああああああああああ! 緊張した! 緊張した!』
初めての客、ワンメーターとは言え、本当に緊張した、だが、実際に客を乗せ、目的地まで送り、そして金をもらった。おれはプロのタクシードライバーになったのだ。
その後はちらほら客を乗せた。「道を教えていただけませんか?」と言っても、怒る客はいなかった。みな、親切に道を教えてくれた。だが、ハプニングもあった。
銀座から西日暮里まで、老夫婦と、その息子か娘夫婦の4人組を乗せた際、まっすぐ行け、との言葉通りに行ったら、遠回りになってしまったのだ。途中、新人のおれでも遠回りをしていることに気付き、「あの、この道で宜しいのでしょうか?」と尋ねると、老夫婦の亭主の方が「いや、おれもわかんないんだ」…
おい!最初にまっすぐ行けって言ったじゃないか!だが、そんなことを言っても仕方ない、これは無理だと判断し、「申し訳ございません、ナビを入れてもよろしいでしょうか」、研修での教えを初日から破り、無事に西日暮里駅に到着。だが、老夫婦の女房の方が言う。
『ちょっと!行きはこんなにかからなかったわよ!!!』
メーターは4,500円弱、遠回りをした自覚のあったおれは、初日からタクシーセンター案件になっては大変だと、やむなく言った。
『行きはどれくらいの金額でしたか?』
『2,500円くらいだったかしら!』
『では、料金は2,500円で結構です、遠回りになり申し訳ございませんでした』
事なきを得たかのようではあるが、運行記録にはしっかりとメーター通りの金額が記録される。ドライバーはその金額通りに納金しなくてはならないのだ、つまりは自腹を切ることになる。
日曜という事もあり、タクシーの稼ぎ時である深夜の時間は、新人のおれには難しく、ほとんど客をのせることができず、午前4時頃、本社営業所に帰庫した。田村の方は、東京に住んでるだけあって、道もおれよりは詳しく、売り上げも25,000円だったようだ。
納金を済ませ、その後は洗車、まずは洗剤と水洗い、ふき取り、タイヤなどは特に入念にきれいにする。さらに車内清掃、座席シートのカバー交換、一晩中仕事をして、これらの作業をするのは結構しんどいことであった。ドライバーの中には、小遣い稼ぎに、1回1,000円で洗車を請け負う人もいるそうだが、新人のおれたちにそんなことを頼めるわけもなかった。
洗車を終え、着替えをして帰宅、東京へ行って、電車で帰って来て、藤沢駅を降りると、空気が明らかに東京と違うことをいつも実感した。そしてほっとするのだ。
家について、ハムとレタスでサンドウィッチを作る、缶チューハイをあける、ぼーっとしながらプレステのゲームに暫く興じる、疲れ果てた体でベッドに横になる、4時間ほど寝たら、法律の勉強だ、そしてまた明日に備え夜10時には就寝する、しばらくはこんな生活が続くのである。
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初日は緊張しましたねー、でもすぐに慣れました。ただ、道が分からない、っていうのはこの仕事をやる上で致命的なことなわけです。いくら新人だから仕方ない、と言っても最初はかなりストレス感じながら走ってました。次回までは、この研修期間中の事を書き、その後はランダムに、思い出深いお客様のお話をしていきたいと思います
僕の家は車無しなので想像が及ばないのですが、営業車を走らせる傍ら掃除・メンテナンスも骨が折れそうです。タイトル含めw楽しく読ませて頂きました😆
コメントありがとうございます!
>>渋滞等の時間にも左右されるんですか?
基本的には信号待ちしている時間もメーターは上がります
記憶が確かではありませんが、渋滞時などは、一定の距離の速度が何キロ以下とかだったら時間でメーターは上がらないようになっていたように思います
>>ここ数年はタクシー利用してないので忘れちゃいました
電車押しのgaiさんですからねーww
日本のタクシーはその距離と料金からすると、世界一高い乗り物だと、あるお客さんに言われたことがあります
高額な乗り物なのに、ドライバーのマナーはなってない!
みたいなw
私はそのお客さんに褒められたんですけどねー
ありがとうございました
今回も興味深く拝見しました。はじめての…緊張が伝わって来るようで、読んでいて鼓動が早くなるほどでした。
大変そうな仕事だなと思っていましたが、実際に大変そうです。ぼくは肝っ玉が小さいので、心労で調子が悪くなりそうです。
コメントありがとうございます!
文中にも出て来る、本社の下品な教官が「タクシードライバーは三日やったらやめられない」と言っていました。
おっしゃるとおり、最初の内は大変な仕事を始めた、と思っていましたが、慣れてくると教官の言った意味がなんとなくわかるようになりました。
そんなことも日記の中で表現できればと思っています
今後もよろしければお付き合いくださいませ~
初めてのお客さんと接客の緊張感を見て、私の20年前のスーパーでのレジの事を思い出しました。。
研修とは違って生のお客さんとの会話…
待たせしました!いらっしゃいませ!○○円のお買い上げになります!一万円お預かりします!とか、
一通りの挨拶が終わるとホッとしてました。。。
何事もトラブルが無ければだけど・・・;;
その頃はマスクも無いし、笑顔が引きつってたと思うわ。。
続きを楽しみにしてます。。
コメントありがとうございます。
初めての業種での接客は緊張しますよね~(^_^;)
タクシーの場合、特に最初の頃、道が分からないというのは常にクレームやトラブルと隣り合わせでしたので、慣れてからも自信のない道ではやっぱり緊張しましたね~
これから色々なお客様との思い出をご紹介して行きます
印象に残っている、っていうのはやっぱり怒られたケース、それも理不尽に… が多かったです
また宜しくお願い申し上げます。
ブログを読ませて頂きました。
現役タクシードライバーです。
都内は人によってホント、得意不得意が生まれます。
銀座ばかりいる人、六本木ばかりいる人、新宿ばかりいる人、世田谷ばかりいる人などなど様々です。
ワタクシは結構、偏りがありますが、流された場所に基本的に流すスタンスでおります。
と言っても平日は銀座、恵比寿、渋谷など、土日祝日は上野やスカイツリー、ベイエリア近辺が多いです。
タクシーも面白いと長続きしてしまいましたw
コメントありがとうございます!
>>ワタクシは結構、偏りがありますが…
偏りがあってあの運収、驚かされます
私もできる限り流されたところで乗せる、って思いながらやってましたけど、練馬とか杉並あたりが苦手で、山手線の東半分くらいが中心でしたねー
それにしても、私のころは、営業所のトップが平均70,000円くらいで、50,000円超えれば60人中15位以内に入るくらいでしたので、売上100,000円とか聞くとまるで夢の世界です
>>タクシーも面白いと長続き…
これは確かにそうですね!
結果法律系の資格取得して今に至りますが、タクシーは天職かもしれない、と思ったこともありましたw
今後もよろしくお願いします