鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

秋草図鐔 古金工 Kokinko Tsuba

2011-10-08 | 鍔の歴史
秋草図鐔 (鍔の歴史)


秋草図鐔 古金工

 表裏の様子を変えている作。以前にも紹介したことがある。表は秋草、裏唐草風の菊。判り難いが耳には網文が廻らされている。確かに秋草図は風景の一部といった風情もあるが、唐草風菊花は明らかに文様。耳にも文様が施されているところなども含め、室町時代前期から中期にかけての、所謂古金工の優れた感性を思い知らされる。赤銅魚子地高彫金銀素銅色絵。52ミリ。□

藻貝図目貫 古美濃 Komino Menuki

2011-10-08 | 鍔の歴史
鍔の歴史



藻貝図目貫 古美濃

 藻草を唐草状に連ね、これに貝を散らして文様としている。赤銅地を打ち出し、図の周りを透かし去って主題の際立たせている。裏面からの鑑賞で、際端を絞っており、際端部分や透かし抜いた端から、かなり薄手であることがわかる。これが時代の上がる目貫の特徴でもある。目貫だけでなく、高彫据紋された笄や小柄も、同様の打ち出しになる塑像であることが多い。 拡大写真を鑑賞してほしい。表面の質感、微妙な魚子が打ち施された海栗の表皮、毛彫の強弱抑揚など、所々の露象嵌が落ちてはいるが、それも景色となっている。



藻貝図小柄 古金工

 桃山頃として紹介したことがあるも、もう少し時代を上げて考えても良いと思う。笄に施されていた文様部分のみを切り出して小柄に直したもの。二点あるが、同じような造り込みと表現であり、時代観も同じことから、ごく近い金工の可能性がある。藻貝を貝の写実として捉えた表現したものではなく、明らかに文様表現で、その魅力が濃密。実用の金工作品は、表面が磨耗し、金の色絵が剥がれてしまうことがある。それを再利用し、しかも古風な味わいをそのまま残して美観とするわけであり、江戸時代の武士の美意識には頭が下がる思いである。