toshiの「読書日記」

忘備録を兼ねて読んだ本の感想などを書いています。個人的な感想なので不快に思われたりすることも有るかもしれませんがご容赦。

「ハリケーン」 高嶋哲夫

2018年02月28日 | 読書日記
幸田真音の「大暴落ガラ」のような話を想像していたら少し違っていた。

温暖化の影響で気象災害が大規模化する中、どのように予報を出すのか葛藤する気象庁。
住民を守るために警報を出すのか、空振りを繰り返してマスコミにたたかれるのか。
実際に避難勧告を出す自治体からは予報精度を上げるように要請されつつ、限界と戦いながら精一杯の予報を行う気象庁。
現状の科学技術に対して、それを上回る要求が一番多いのが天気予報だと思う。

気象庁の予報官の田久保が、土木の専門家の川端とともに両親を亡くした災害現場を訪れ、徐々に考え方が変わってゆく。
やがて空振りを恐れ後ろ向きになりそうな上司に対し、田久保が信念をもって警報を出すようになる。
最後はそれによって、自分の家族を守ることになる。

予報官としても田久保のメーンストーリに対して、災害派遣される自衛官の中村のサブストーリが有るが、田久保や彼の家族のサイドストーリがてんこ盛り過ぎて気を入れて読んでいないとメーンストーリがあいまいになってしまう。
妻の恵美や彼女の母親の話くらいは物語の彩かもしれないが、息子の剛志の話や志保の話は要らないでしょう。。




幻冬舎
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「工学部ヒラノ教授の終活大作戦」 今野浩

2018年02月24日 | 読書日記
流石元工学部の教授、何事も論理的かつ計画的で合理的。
工学部卒業の私と基本的に同じ思考。

このシリーズは「工学部ヒラノ教授の中央大学奮戦記」に続いて2冊目だけど、「工学部ヒラノ教授の中央大学奮戦記」は率直に東工大の学生に比べて中大生はレベルが低いっていうようなことが書いたあったりしたけれど、こちらは教授の年収がいくらで退職金がいくらという話が登場する。





青土社
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「トヨタ物語」 野地秩嘉

2018年02月20日 | 読書日記
日本を代表するグローバル企業のトヨタの生産技術に関して書かれた本。
と言ってもトヨタ生産システムを説明するのではなく、このシステムがどのように生まれ、どのように広まり、そのように発展してきたかに焦点が当てられている。

トヨタに関する書籍は数多あり、その中には良く書かれていないものも多い。
「絶望セールス」なんか読むと、どうしようもない会社と思わせる。
それに対してこの本は思いっきり好意的に書かれている。

本田宗一郎や井深大だと開発物語となるところだろうけど、豊田喜一郎も彼らに負けないエンジニアでありながら、乗用車の完成前に亡くなったせいか、開発に関してはあまり読んだことが無い。
この本もそのあたりにはちょっと触れてるだけで、メーンテーマはその生産システム。

物作りが大好きな私にとっては大変興味深く読めた。






日経BP社
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「秀吉の活」 木下昌輝

2018年02月13日 | 読書日記
タイトルもそうだけど最初に目次を見てちょっと引いてしまった。
第一章 天下人の就活
第二章 天下人の婚活
と、この調子で第十章の「天下人の終活」まで続くから無理やり秀吉の活動にこじつけたビジネス書のような内容を想像した。
ところが、読み始めて分かった実際の内容はいわゆる「太閤記」、秀吉の伝記で一安心。物語の内容に合わせて無理やり「天下人の〇活」とタイトルを付けた感じ。
時世に乗って安易なタイトルにして失敗してます。タイトルに惑わされることなく安心して読めます。

これだけ何人もの作家が書いてきてスタンダードになったネタをどう料理するかは著者の腕の見せ所。
史実に基づいた話なので全くの出鱈目は無いと思うけど、各章を「天下人の〇活」として、それに沿うように物語を進めているのでかなりのご都合主義や違和感が有ったりするけど、運にも助けられながらも先陣の七度名乗りをする場面と、吉田鬼雲斎と浅野又右衛門の一騎打ちの場面は感動的。

主人公の秀吉や信長は当然としても、弟の小一郎(豊臣秀長)の描き方が堺屋太一の「豊臣秀長」とはあまりに違って同じ人物とは思えない。
そもそもあまり重要視されない人物でこちらでは脇役、あちらでは主人公だから扱い方が違うのは当然だけど・・、これもスタンダードなテーマの作品を読むときの楽しみ。

第八章の「天下人の朝活」のみ書き下ろしということだけど、この章はあえて付け加える必要なかったのでは・・。
というより、第八章以降はすべて要らない。





幻冬舎
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「不毛地帯」 山崎豊子

2018年02月10日 | 読書日記
決して詰まらないわけじゃないんだけど、続きが読みたくて徹夜しちゃうほどではなかったので、読み終わるのにずいぶん時間がかかってしまった。同じ5分冊の「模倣犯」の倍くらいかかったんじゃないだろうか。。

終戦後、ソ連の捕虜になっていた主人公壹岐が商社に就職するところから物語が始まるが、第一巻では現在の話と回想の形での捕虜生活の話が交互に出てくる。捕虜生活の話は悲惨すぎて読んでいて嫌になってしまう。

第2巻からは壹岐が商社マンとして生きていく話になって行く。最初はロッキード事件を連想させるような自衛隊機の売り込み合戦。不本意ながら軍隊時代の人脈を活用して勝ち取る。そしてその7年後スエズ運河を巡る情報合戦を通じて中途入社ながら異例の出世を遂げる。それにより社内の派閥争いに巻き込まれ、妻の突然の死をきっかけに、アメリカ子会社の社長に就任。千代田自動車とフォークの提携事業を手掛けるものの寸前のところで東京商事鮫島によって覆される。部下の八束は千代田自動車の提携先としてユナイテッド・モーターズにアプローチを始める。
一方壹岐はイランでの油田開発に乗り出そうと動き出す。油田開発の権利を何とかものにし試掘を始める。なかなか石油は出てこなかったが最後に大油田を掘り当てる。一方ユナイテッドと千代田自動車との提携が水面下で進められていて最後にライバルの鮫島に一泡吹かせられる。

終盤の社長とのやり取りはちょっと違和感がある。また商社マンとして成長していく過程が描かれていないせいで、商売の経験も会社勤めの経験も無い壹岐がいきなり大活躍するのも解せない。千里とのサイドストーリが最後に生きるかと思ったが特にそんなこともなく、この話は全く余計な気がする。




新潮文庫
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