「ほら、この絵はこんな風に見えるけど実は違うんだよ」っていう絵をたくさん並べて、「驚いただろう!」と言う本かと思ったら、錯視について歴史的、科学的に解説する本だった。
第一章は人間がものを見る(認識する)と言うことはどういうことかという普段ほとんど気にしないような事(個人的にはこの手の話は好きなのであちこちで読んだことが有るけれど)から始まって、歴史順に発見された錯視の起こるサンプルに対して心理学や脳科学的な解説と続く。
錯視の生ずる図形に発見者や発表者の名前がついていて(「ポッケンドルフ錯視」とか「ツェルナー錯視」とか)、それが多数有ることに驚く。
またそれがどういう原理で錯覚されるのか説明が有るけれど、いずれも定説ではなくはっきりとは分かっていないということにもびっくり。どれも納得できる説明なんだけど、脳科学の世界は奥深い。
ここで取り上げられた図形を見ていると目が(頭が)おかしくなったんじゃないかと思えてくるものも有って(「ヘルマン格子錯視」や「多義図形」「マッハ帯」など)面白い。
「嫁と義母」は錯視の仕方(?)まで説明されているのにどうしても若い女性だけで老婆は見えてこなかった。
若い人ははじめに若い女性が見え、年齢が高い人ははじめに老婆の横顔が見えるらしいんだけど・・・。
第二章は錯視の例を集めたもので、自然にそうなったものや錯視を意識して作られたものが紹介されている。実際に見たことが有るものが多いけれど、中にはそうだったのか・・・の例も。騙されていたのね(笑)。。
第三章は錯視を研究している著者の成果の紹介。
コンピュータシミュレーションによる研究とのことだけど、アルゴリズムも紹介して欲しかった。
こどもくらぶ