「メス」繋がりで勝手に大鐘稔彦の「孤高のメス」のような物語だろうと思っていたら、ちょっと違った。
田舎の病院で真摯に患者に向かい合おうとする医者たちと、管轄する役所との対立を描いた物語。
冒頭、主人公の女医の東子が上司と不倫をして離婚されるところから始まるが、あまりにありきたりな展開で読むのを辞めたくなった。
離婚騒動が落ち着いて、東京を離れ東北の病院に再就職するところから本来の物語が始まると、俄然面白くなってくる。
東子が行きついた病院には、田舎で活躍する無名の名医がいて、東子は彼に共感して彼が始めた医療行為を推し進める。
しかし、それは倫理上許されない行為とされ、管轄省庁から指導を受けることになる。
ここから物語が加速度的に面白くなっていく。途中、病院が大震災に見舞われたりして、ストーリが途切れてしまうのでちょっとイラつくが、また軌道修正していく。
ここの震災関連の廻り道は不要ですね。
何が起こったか、その場では詳しく書かず、あとからそこで起こったことを書くという手法が多用されるけど、分かりにくいだけです。
しかも凝った割には、ミエミエで分かってしまうので何の意味も無いんだけど。
折角面白い話なのに、冒頭の話と地震にまつわる部分が残念。
新潮文庫