さざえのつぶやき

音楽活動を中心に、日頃の思ったこと感じたことを日記のように綴っていこうと思います。

飛鳥の路 

2011年11月13日 | 下手の歌好きソングライターのつぶやき

2008年02月24日のブログ引用


あの日、僕はひとりを楽しみたかったのだろうか・・・現在(いま)の自分からは考えられない『孤独』を楽しむ癖があったのかもしれない。
ちょうどあの頃は、『失恋』というものを、柄にもなく体験したばっかりで、未練たらたらの情けない日々を過ごしていたように思う。

部屋に閉じこもっていてばかりではいけないと、せめて孤独でも、外に出かけて、ゆっくり自分を見つめ直そうと降り立った駅・・・『飛鳥駅』

小学校の5年生くらいから飛鳥の古墳や史跡に興味を持ち、すでに飛鳥通になっていた僕は、なじみの散策路をゆっくりと何も持たずに歩いていた。
欽明天皇陵を過ぎ、鬼の雪隠、まな板に通じるのんびりとした道で、あの『悲しい出会い』は待っていた・・・。

当時、僕は22歳・・・その彼女は結局最後まで歳を訊くことが出来なかったけど、話す内容や話し方からすると、僕より五つくらい年上だったかと思う。
「橘寺はこの道でいいんでしょうか?」そう、尋ねてきた彼女は、とても美しく色白で、細く華奢な、ジーンズが似合う女性だった。
今から思えば、あの頃にそんな勇気がよくあったものだと、首をかしげてしまうのだが・・・「よかったら、一緒に歩きませんか?僕、結構詳しいんです。」



甘樫の丘から孝元天皇陵を過ぎて、橿原神宮駅まで歩いた後、彼女のほうからだったか、僕のほうからだったか、「今度いつか会えたら、すごい偶然ですよね。」
「そのときはまた声かけてください」・・・みたいな、本当にそのときは話の流れの上で冗談を言ったつもりだったのだ。


まさか・・・それから1年後に・・・それもまったく違う季節?だったように思う・・・まさか・・・そのまさかが起きた。

飛鳥駅の西側・・・そう、真弓の丘付近で・・・。



文通がはじまった。
名古屋と奈良・・・少し遠いけど、なんとなく近い・・・。
いつしか、5通の手紙を最後に、返事がこなくなった。


春一番が吹くある日、その悲しい手紙は届けられた。
彼女からではなく、同じ住所からの・・・お母さんからの手紙だった。


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春一番が来る季節になると、今でも思い出す、不思議な、ドラマのような、悲しい思い出話し。


そんなことを思いながら書いた歌が、『飛鳥の路』です。



飛鳥の路 作詞・作曲:ながたたかし

ホームを降りたら風がさそってくる
心の中によみがえる あの日のふたり
レンゲの花揺れてる真弓の丘には
あの頃と変わらないままの のどかな風景
君と初めて腕組み歩いた 橘の道を
今は一人で歩いています 君を思いながら
ああ 君とまたここで会えそうで
ああ こころのふるさと 飛鳥の路よ

昔を偲ばせる 都の跡には
万葉歌人のうた声が きこえるようで
板葺の宮から 真神原の辺り
甘樫の丘を望めば 飛ぶ白鷺
小川のせせらぎ 耳を傾ける君の頬に口づけた
黙ったままの二人を照らす 二上山の夕日よ
ああ 君とまた ここで会いたくて
ああ いにしえの都 飛鳥よ

ガイドブックに栞のように 君が挟んだ押し花
ホームを挟んで 風が伝えた ふたりの切ない思い
ああ 君とまたここで会えそうで
ああ 飛ぶ鳥よ 飛鳥の路よ