岩田亨の短歌工房 -斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・短歌・日本語-

短歌・日本語・斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・社会・歴史について考える

うそ鳥の歌:尾崎左永子の短歌

2022年12月04日 18時29分32秒 | 尾崎左永子(長澤一作・川島喜代詩)の短歌を読む
・うそ鳥はさくらのつぼみを食むというわれは菜の花の色わかきを食む「尾崎左永子八十八歌」所収。2015年に開催された「色紙展」の出品作。この段階での代表歌だ。「個別具体的」な「場所」は「捨象」されている。佐藤佐太郎の言う「表現の限定」、作者の言う「言葉の削ぎ落し」。上の句から下の句への転換は、「序破急」の「破」、「起承転結」の「転」だ。 「華麗なる歌」ここに作者の独自性がある。これは余人を寄せ付けま . . . 本文を読む

曇天の野茨の歌:尾崎左永子の短歌

2022年12月03日 22時50分45秒 | 尾崎左永子(長澤一作・川島喜代詩)の短歌を読む
・地にもどる掟拒みて曇天の野茨の実は冬を超えたり「尾崎左永子八十八歌」所収。2015年に開催された「色紙展」の出品作。この段階での代表歌だ。初句が印象的。植物の果実は、大地に戻り子孫を増やす。それを「自然の掟」と捉えて、野茨が、その「掟」を「拒む」と作者は捉えた。いかにも作歌を「闘い」と捉えた作者らしい作品だ。「個別具体的」な「場所」「時刻」は「捨象」されている。佐藤佐太郎の言う「表現の限定」、作 . . . 本文を読む

かまくら歌会:2022年12月

2022年12月02日 18時45分12秒 | 歌会の記録(かまくら歌会・星座・星座α・運河)
かまくら歌会が12月2日 鎌倉の生涯学習センターで開催僕の批評「助詞の用法の難」「動詞の使い方」「地下茎と根は異なる」「推量が必要」「シャレ過ぎている」「余分な助詞から感嘆詞への改作」「語感の悪さ」「上の句と下の句がつながらず意味不明」「状況が理解できない」「とう」は「という」と言い切ること。メンバーがかなりの実力をつけてきた。 次回は、2023年1月6日12:30から、生涯学習センター美術室。 . . . 本文を読む

風の隼の歌:尾崎左永子の短歌

2022年11月30日 18時59分42秒 | 尾崎左永子(長澤一作・川島喜代詩)の短歌を読む
・ひとたびは空駆けのぼり直線に敵ふくす(原作は漢字表記)べし風の隼「尾崎左永子八十八歌」所収。2015年の「色紙展」の出品作。この段階の代表歌だ。 「風の隼」は鳥類の「風に羽ばたく隼」だろうか。上の句の勢いが効いている。「敵ふくすべし」は歌壇で闘ってきた作者の「自己投影」だ。 とにかく作者は自分の作品には厳しい批評眼を持っている。そんな作者の作歌姿勢がわかる作品。また「個別具体的」な場所は「捨象」 . . . 本文を読む

現代万葉集の2022年版三首(相聞)

2022年11月30日 00時04分31秒 | 岩田亨の作品紹介
今年は「相聞」を三首出詠した。・お互いの呼吸のさまを感じつつ峠に立ちて琵琶湖見下ろす・住み慣れぬ異国の地にて暮らし居る女(おみな)二人を愛おしむわれは・汝(なれ)はいま大人の表情見せたりき紫式部のいろ淡き日に 難解ではなかろう。知り人を思いやる三首だ。 相手が男女どちらでも、年齢に関わらず「相手を思いやる」のが「相聞」である。 . . . 本文を読む

あぶら菜の歌:尾崎左永子の短歌

2022年11月29日 00時11分24秒 | 尾崎左永子(長澤一作・川島喜代詩)の短歌を読む
・あぶら菜に似る黄の花を踏みしだきわれは天空の下の一点「尾崎左永子八十八歌」所収。2015年に開催された「色紙展」の出品作。この段階での代表歌だ。「あぶら菜に似る黄の花」の「個別具体的」な植物名は「捨象」されている。佐藤佐太郎の言う「表現の限定」、作者の言う「言葉の削ぎ落し」。「天空の下の一点」という「結句」が効いている。「結句で勝負せよ」と言う作者だが、それを実現した一首である。また、上の句から . . . 本文を読む

雨の日の桜の歌:尾崎左永子の短歌

2022年11月27日 21時25分01秒 | 尾崎左永子(長澤一作・川島喜代詩)の短歌を読む
・雨の日のさくらはうすき花びらを傘に置き地に置き記憶にも置く「尾崎左永子八十八歌」所収 2015年に開催された「色紙展」の出品作。この段階での代表歌だ。 「花びら」を主語とした擬人法だが違和感がない。それは下の句のリフレインの効果だろう。「擬人法」はわざとらしく、また俗になりやすい。リフレインの心地よさが、それを帳消しにしている。ここは極めてうまい。「短歌の90%は技術だ」と作者は佐藤佐太郎に言わ . . . 本文を読む

立春の歌:尾崎左永子の短歌

2022年11月27日 00時06分51秒 | 尾崎左永子(長澤一作・川島喜代詩)の短歌を読む
・立春の日を浴みゐたり目に見えぬ花を心に蓄ふるごと「尾崎左永子八十八歌」所収。2015年に開催された「色紙展」の出品作。この段階での代表歌だ。「目にみえぬ花」とはなにか。「個別具体的」な花の名は「捨象」されている。佐藤佐太郎の言う「表現の限定」、作者の言う「言葉の削ぎ落し」。 「目に見えぬ花を心に蓄える」という表現は幻想的だ。「幻想歌」と名づけようか。 佐藤佐太郎に学びながら、全く異なる「感受」。 . . . 本文を読む

三十代の歌:尾崎左永子の短歌

2022年11月26日 01時19分13秒 | 尾崎左永子(長澤一作・川島喜代詩)の短歌を読む
・足早に駆け抜けしわが三十代聖橋散る枯葉ボブ・ディランなど「尾崎左永子八十八歌」所収。2015年に開催された「色紙展」の出品作品。この段階での代表歌だ。「モダンな心理詠」だ。作者は「かまくらもだぁん」という表題の歌集を上梓しているので「モダンな感覚」の持ち主だ。作者の美的感覚を表現した作品。佐藤佐太郎に学びながら、佐藤佐太郎とは全く異なる感覚。独自性とはこういう出方をするのだ。何も突拍子な作品が独 . . . 本文を読む

夕霧峠の歌:尾崎左永子の短歌

2022年11月24日 15時46分13秒 | 尾崎左永子(長澤一作・川島喜代詩)の短歌を読む
・秋草の花みな濡れて霧になびく夕霧岬といふ道を越ゆ「尾崎左永子八十八歌」所収。歌集では「夕霧岬」これで作者は歌壇で最も権威のある賞を受賞している。その歌集の表題歌である。2015年の色紙展」の出品作品。この段階での代表歌だ。「秋草」の「個別具体的」な名称は「捨象」されている。佐藤佐太郎の言う「表現の限定」、作者の言う「言葉の削ぎ落し」。 「夕霧岬」は実際に石川県にある。斎藤茂吉の直弟子の梶井氏の住 . . . 本文を読む

透明の香の歌:尾崎左永子の短歌

2022年11月23日 16時57分14秒 | 尾崎左永子(長澤一作・川島喜代詩)の短歌を読む
・光さへ透明の香を持つならんこの青豁(あおたに)に羊歯ほぐれゆく 「尾崎左永子八十八歌」所収 2015年に開催された「色紙展」の出品作品。この段階での代表歌だ。「光が透明の香を持つだろう」に作者の発見がある。独自性のある「感受」とも言える。「青豁」の「個別具体的」な場所は「捨象」されている。佐藤佐太郎の言う「表現の限定」、作者の言う「言葉の削ぎ落し」。 また、上の句から下の句への転換は「序破急」の . . . 本文を読む

夏炉冬扇の歌:尾崎左永子の短歌

2022年11月22日 18時13分41秒 | 尾崎左永子(長澤一作・川島喜代詩)の短歌を読む
・夏炉冬扇といへどやさしき音に立つは蔵ひ忘れし冬の風船「尾崎左永子八十八歌」所収2015年開催の「色紙展」の出品作品。この段階での代表歌だ。「場所」の個別具体的な「名」は「捨象」されている。佐太郎の言う「表現の限定」、作者の言う「言葉の削ぎ落し」。 上の句と下の句への転換が「序破急」の「破」「起承転結」の「転」である。また「全体」が寂しさを「象徴」しているように感じる。 . . . 本文を読む

花芽幾千の歌:尾崎左永子の短歌

2022年11月22日 00時14分16秒 | 尾崎左永子(長澤一作・川島喜代詩)の短歌を読む
・空渡る風の音して早春の闇にふくらむ花芽幾千「尾崎左永子八十八歌」所収。2115年に開催された「色紙展」の出品作品。この段階での代表歌だ。思い出した。この「色紙展」に僕は行ったのだ。「色紙展」といっても「色紙」「短冊」「掛け軸」があった。岡井隆、岡野弘彦、安永蕗子が出品していた。岡井、岡野、安永、尾崎の短冊が即売されていた。尾崎左永子の短冊はいち早くなくなり、僕が行ったときは、他の作家の短冊しか残 . . . 本文を読む

薔薇の模様の傘の歌:尾崎左永子の短歌

2022年11月18日 23時59分25秒 | 尾崎左永子(長澤一作・川島喜代詩)の短歌を読む
・濡るるといふ程もなき街角に薔薇の模様の傘を買ひたり「尾崎左永子八十八歌」所収。2015年の「色紙展」の出品作品。この段階での代表歌だ。「美しい都市詠」だ。 「街角」の個別具体的な場所は「捨象」されている。佐藤佐太郎の言う「表現の限定」、作者の言う「言葉の削ぎ落し」また下の句への転換は「序破急」の「破」。「起承転結」の「転」である。 . . . 本文を読む

夏椿の歌:尾崎左永子の短歌

2022年11月17日 17時48分08秒 | 尾崎左永子(長澤一作・川島喜代詩)の短歌を読む
・たそがれに蕊伏せて散る夏椿散りてなほ浄し夏至の土の上「尾崎左永子八十八歌」所収。2015年に開催された「色紙展」への出品作。この段階での代表作。 二句、四区に作者の発見がある。「歌が出来なかったら、メモ帳を持って外へ出ましょう」という作者だが。漫然と外出しても「歌」は詠めない。観察眼が必要だ。五感を鋭くして外出するのが肝要だ。 この作品では「個別具体的」な場所が「捨象」されている。佐藤佐太郎の言 . . . 本文を読む