・まかかよふ真夏なぎさに寄る波の遠白波の走るたまゆら
「あらたま」所収。
この作品には「佐藤佐太郎の『茂吉秀歌』」、「塚本邦男の『茂吉秀歌・あらたま』、長澤一作の「斎藤茂吉の秀歌」にも記載はない。
しかし僕には印象的な作品だ。「遠白波」という造語に惹かれるのだ。斎藤茂吉の作品には「造語」がいくつかある。
「逆白波」「遠のこがらし」。「造語」を作れるのは、言葉にたいする「感性」が敏感なのだ。
「美しい叙景歌」だ。
僕が短歌を始めたころ、尾崎左永子から「造語」もどんどん作りなさい、と言われた。
僕はまだ一つしか作っていない。第一歌集「夜の林檎」の「夕波がしら」だけだ。斎藤茂吉は「造語」の名手でもあったのだ。