・秋草の花みな濡れて霧になびく夕霧岬といふ道を越ゆ
「尾崎左永子八十八歌」所収。歌集では「夕霧岬」これで作者は歌壇で最も権威のある賞を受賞している。その歌集の表題歌である。2015年の色紙展」の出品作品。この段階での代表歌だ。
「秋草」の「個別具体的」な名称は「捨象」されている。佐藤佐太郎の言う「表現の限定」、作者の言う「言葉の削ぎ落し」。
「夕霧岬」は実際に石川県にある。斎藤茂吉の直弟子の梶井氏の住んで居る金沢市に近い。作者が梶井氏と懇意だから、度々、梶井氏と同行している。その関係で峠の知ったのだろう。
また上の句から下の句への転換は「序破急」の「破」、「起承転結」の「転」である。
そして全体が「悲しさ・寂しさ」を「象徴」しているように思う。