岩田亨の短歌工房 -斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・短歌・日本語-

短歌・日本語・斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・社会・歴史について考える

雨の日の桜の歌:尾崎左永子の短歌

2022年11月27日 21時25分01秒 | 尾崎左永子(長澤一作・川島喜代詩)の短歌を読む
・雨の日のさくらはうすき花びらを傘に置き地に置き記憶にも置く
「尾崎左永子八十八歌」所収 2015年に開催された「色紙展」の出品作。この段階での代表歌だ。

 「花びら」を主語とした擬人法だが違和感がない。それは下の句のリフレインの効果だろう。「擬人法」はわざとらしく、また俗になりやすい。リフレインの心地よさが、それを帳消しにしている。ここは極めてうまい。「短歌の90%は技術だ」と作者は佐藤佐太郎に言われたそうだが、高度な技術である。実にうまい。音楽性が高いのだ。
 
 場所の「個別具体的」な「名」は「捨象」されている。佐藤佐太郎の言う「表現の限定」、作者の言う「言葉の削ぎ落し」。

 また、上の句から下の句への転換は「起承転結」の「転」、序破急」の「破」である。作者の代表歌の上位を占める作品だ。





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