『憲法を詠む』:「憲法九条を守る歌人の会」篇
・独裁者はほぼ十年で潰えると歴史は言えどその日は待てぬ (久々湊盈子)
・「起立多数」繰り返されて防衛費五兆円余の国となりたり(日野きく)
・やんばるの森さえまたも奪われる基地七十年沖縄いまも(酒本けい子)
・アジア史に人間の罪(とが)誌(しる)しつつわれが裡(うち)なる兵士老いたり
(島田修二)
・たたかひを知らぬ者等が憂ひなく戦略といひ戦術といふ(梓志乃)
一首目。独裁者が永らえた例は歴史上ない。だが「最も危険な政権」と呼ばれる現政権。政権の崩壊を待っている時ではない。
二首目。強行採決の連続。防衛費が五兆円を超えた。かつてない事である。事実の中に怒りが感じられる。
三首目。「やんばるの森」には沖縄の辺野古基地が建設されつつある。「沖縄の中に基地がある、というより基地の中に沖縄がある」。という状況は今も変わらない。
四種目。作者は海軍に従軍し、従軍記者ともなった。戦争責任を感じるとともに、自らが老いていくのを心に深く感じている。
五首目。「戦争を知らない世代」がいとも容易く、憲法を論じ、安全保障を論じる。戦争はゲームではないのに。