岩田亨の短歌工房 -斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・短歌・日本語-

短歌・日本語・斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・社会・歴史について考える

フラメンコライヴ@東京神田(2)

2017年03月24日 21時07分37秒 | 短歌の周辺
フラメンコライヴ   於)オーレオーレ 神田神保町 03-5280-1137



 フラメンコライヴを見るのは二回目。今回は90歳になる母を連れていった。オーレオーレは神田神保町の古書店街にある三省堂書店の向かい側、レストラン サイデリアの真向かいのビルの地下にあるスペインレストラン。定期的にフラメンコライヴを上演する。


 FBの友人が「フラメンコ歌舞団」の団長をやっているのが縁で見に行くようになった。かれはフラメンコのギタリストだ。フラメンコライブのプロデューサーでもあるらしい。


 前回見たのは2月。初めての経験で音をとり、視覚に焼き付けるので精いっぱい。料理をお任せにして予約したから食べられないものが多かった。例によって噛むのが夢中で十分楽しめなかった。


 今回は母の料理と僕の料理を分けて注文して十分に楽しんだ。フラメンコの舞台には5人が登壇する。一人はギター、もう一人がカンテと呼ばれる歌手、残りの三人がバイレと呼ばれるダンサーだ。今回気づいたのだが、ギターもカンテもマイク無し。それでも室内に響くのだから、ギターはかなりの音量、カンテはかなりの声量だ。フラメンコはジプシーが旅先で踊ったから本来はこういうものなのだろう。



 カンテの声の重さにまず驚く。体全体から声を出している。ギターもそうだ。バイレの踊りに合わせて熱演をする。バイレの三人は交代で踊るが、一人が躍っている最中に手拍子をして足で床にステップを踏んでリズムをとる。これがパーカッションの役割だ。日本の古典文学で宴会の場面に「手を打ち、足踏み鳴らして」という表現があるがまさにそうだ。


 今回は心に余裕があったので、出演者の表情なども見た。カンテは声を振り絞って歌う。バイレは手の先、指の先まで神経をとがらせておどる。踊らないバイレは、ダンサーを見上げている。バイレは3人で、若手、中堅、ベテランの三人。若手が見上げる表情はベテランの踊り方を見て学ぶというもの、ベテランの表情は若手がしっかり踊れるか見守るもの。それに渾身のギター演奏が響くわけだから舞台に緊張感が満ちる。


 では踊りはインパクトのあるものばかりかと言うとそうではない。切なさ、悲しさ、歓喜、華麗、荘厳と、豊かな表情がある。三人が三人の資質にあった踊りを披露するから、見ていて飽きない。店が歓喜の渦に巻き込まれる。若手は情熱と若さを表現の中心におき、ベテランは情熱とたおやかさを表現の中心におく。


 会場からは折々「オレ!」の声があがる。二回目の僕は、声をかけるタイミングがわからない。だから体で感じたリズムで手拍子を打った。母は喜びのあまり三度立ち上がった。そのうち一度は自分も踊った。「まあ、すわって」とそのたびに言った。

 こんな見方は舞台の邪魔になるのかと心配したが、それが舞台から見えると終了後に聞いた。「喜んでもらってうれしかった」とも言われた。母が90になること、フラメンコを見るのは戦前の10代のころ以来70年ぶりだと話したら、出演の人たちと記念撮影をしてくれた。


 フラメンコは文句なく美しい。存分に楽しんだ夜だったが、母もよい思いでが出来たに違いない。




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