角川現代短歌集成に出詠するよう依頼があり、五首掲載された。
「俳句には歳時記があり作品の評論などに使われていますが、短歌にはそうしたものがありません。斎藤茂吉・釈迢空なきあとの現代短歌のうち代表歌を広く集め、のちのちまで残るものをという企画を立てました。」
確か「原稿依頼」の文面はこのようなものだったと思う。「角川・短歌」創刊55周年記念の大事業のようだ。ここの末席にでも連なれることは、大変嬉しくもあり、大きな励ましを頂いたように思う。
「生活詠」「人生詠」「自然詠」「社会文化詠」の4巻と「索引年譜」の別巻がある。1500人の歌人、30000首に及ぶ一大アンソロジーだ。僕が出詠したのは次の5首。
・三四郎が顔出しそうな洋食屋 針の止まりし時計もありて(「夜の林檎」)
・ナルシスの末裔という水仙を活ける器にガラスを選ぶ(「夜の林檎」)
・硝子戸に映るわが顔表情の乏しき上を甲虫が這う(「運河」誌上)
・ネーブルのみづみづしきに歯を立つるある決断を下したるあと(「運河」誌上)
・捨つべきは何と何と何 みずからに問いつつ歩め風は湿れど(「星座」誌上)
*「運河」誌上以外は新カナを使用*
このブログで紹介したものとかなり重なっているが、この企画を通じて一つ学んだ。短歌は4つのカテゴリーで分類できないものだということ。「自然詠でありながら人生詠」であったり、「社会文化詠でありものが同時に人生詠」でもあったりする。短歌が文学で人間を表現する以上、当然なのだろう。
「よい短歌とは何ですか。」
「百年たっても残るものを目指しなさい。」
と教えられたこともあった。今度の企画に参加できたことで、その目標に少し近づいたかと思う。
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申込は最寄りの書店へ。
「角川現代短歌集成」(全4巻・別巻1)
全巻セット 21000円
1~4巻 各 4410円
別巻(索引・年譜) 3360円