筏丸けいこ。『モリネズミ』は久しぶりの詩集刊行だと聞いた。その後記には「女ターザン」に見合うように精進したいと書いている。
その通り、不思議で豪胆な詩集だ。豪胆というより思い切った言葉遣いをした詩集だ。
不思議な面。言葉を紡いでいるのだが、この言葉をどういう意図で選択したかがわからない。一行読んで次にどんな言葉が続くのか見当がつかない。それでいて表現している世界が恐ろしく広い。次にどんな言葉が続くかそんな期待を感じさせる作品群がある。印象的なフレーズ。
「あったかい\東京湾のイシモチで つくった家は/天気がよければ 一夜干し」(いしもち)
「素足でビートルズを聴いている/ビートルズは足の裏から聴けと/寝転んで」(天日干し)
「なんにもいらない/はじめから/むく犬どんどん」(むく犬どんどん)
また人間を暗示した作品もある。
「半分だけカットしてもらえますか/ドアをあけた中学生くらいの男の子が言った」(半分だけ)
「母が好きだ\何かエキゾチックな木が/枝をのばして/欲求をもつとき」(私は 子供のようになるときの)
「自分の声の大きさがわからない/おかわりごはん/ごはんをおかわりしてちょうだい」(狂ったごはん)
そして言葉のつながりに無理がなく、リズムが快い。作品を読んでいて作者が好奇心旺盛なことがわかる。それが作品の世界を広げている。豪胆だと言ったが気風の良い詩集だ。