岩田亨の短歌工房 -斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・短歌・日本語-

短歌・日本語・斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・社会・歴史について考える

歌集『聲の力」より安保法に関して3首

2016年07月07日 12時15分38秒 | 岩田亨の作品紹介
『聲の力』より。

 ・群衆の声々響くビル街の列を離れて握り飯食う


 ・議事堂を目の前にして坐りこむ静かな怒り内に秘めつつ


 ・戦争をこばむ者らが集うとぞ君よ友つれ議事堂囲め


 安保法(戦争法)反対、廃止の集会やデモを詠んだものだ。2015年9月19日の強行採決の直前には議員会館前で徹夜して抗議の声を挙げた。


 日本の戦後民主主義の危機を感じた。僕の知り合いの歌人も集会やデモに参加した。東京新聞が「2014年安保」と呼ぶ大きな運動だ。素材はたくさんあろう。だが不思議なのは「2015年安保」を当事者として作品にした例をほとんど見ない。

 70年安保は盛んに詠まれた。道浦母都子、岸上大作。「70年安保はどう詠まれたか」という特集が総合誌で組まれるほどだ。その70年安保を詠んだ歌人たちはどうしたのか。高齢になって歌壇の重鎮になって、自分の地位を危なくするようなことはしないのか。


 若手歌人はどうか。現代歌人協会賞を受賞した歌人の歌集は「社会との接点が希薄だ」と批評されたらしい。ではその選考委員は社会との接点を掘り下げた作品を作っているのか。何かしっくり来ない。



 この他にも、社会詠を「火祭り」と題して収録した。プロレタリア短歌の系譜を引く歌人からはこの一連が好評だった。別の一連は斉藤茂吉と佐藤佐太郎の系譜を引く歌人から好評だった。収録作品の質としては悪くないと思う。


 特に社会詠は当事者としての独自性があったと思う。






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