「星座α」13号 作品批評
「理屈や説明を排するために」
今号は粒揃いの作品が多かった。理屈や説明でなく、作者一人一人が情感を確かにかみしめている。情感であるから喜怒哀楽を先ず心に留めることだ。
(異国より選挙の投票する歌)
政治に関わることだが、異国に住む作者の望郷の念が表現されている。
(朝日が一人の部屋に差す歌)
作者は一人暮らしなのだろうか。その孤独感と尋ね来る人を待ちわびる情感が表現されている。
(例大祭のポスターを貼る人の歌)
下町であろうか。例大祭とは年に一、二回と決められた祭礼である。街の風物詩なのだろう。懐かしさが伝わる。
(自分を悔いつつ言訳を探す歌)
悔恨と悲哀の情である。作者の自己凝視もそこにある。巧みな心理詠だ。
(熱い涙の流れ出る歌)
解説の必要はなかろう。非常に主情的な作品である。余程作者の心に響く言葉を聞いたのだろう。
(自分の発した言葉が返って来た歌)
自分の発した言葉が自分に返ってくる。作者は救われた気持ちになったのだろう。
(細かい雨が音もなく落ちる歌)
場所の設定、対象の限定が効いている。叙景歌ではあるが、哀感が漂ってくる。
(仏間に座り遺影に語りかける歌)
挽歌である。結句の表現が効いている。
【短歌は定形の抒情詩である。表現したい抒情が読者にストレートに伝わる作品が秀歌だと僕は考えて選歌している。モダニズムとは違う表現の特徴のある作品に毎回注目している。】