星座α26号:作品批評。
人間を詠う
・真夜中に電話のコールがとまる歌
ハットさせられる歌である。作者の心も騒だったに違いない。その一瞬を上手くすくい上げた。
・故郷の料理を作る歌
コロナによる自粛、家籠り、天候不順と続けば気も晴れぬ。そういう時はなつかしくき味を楽しみたいもの。
・水のように雲のような心を持ちたいという歌
境涯詠である。愚痴でないのが良い。「短歌は詠嘆の詩形」と良く言われるが、詠嘆と愚痴は違う。この作品のような心を持ちたいと思う。
・筍飯の釜の蓋を取る歌
・沸き立つ湯にアスパラを一気に放つ歌
いわゆる厨歌(くりやうた)を2種。台所で詠む歌。この場合は料理の歌だが、勢いがあり、出来た料理を食べたいという気持ちが湧き上がってくる。「食べものの歌は旨そうに歌え」とは尾崎主筆の兄弟子、川島喜代詩の言。
・建設職人と目が合う歌
作者の団地は大規模工事らしい。その工事の職人を温かい目で見ている。「こういう作品こそプロレタリア短歌だ」と私の知人が言う。
・介護の夫の幻覚の歌
・食事したのを忘れる父の歌
介護の歌だが、相手に対する思いやりが感じられる。ここに良さがある。介護や看病は難儀であろうに。
他にも紹介したい作品がいくつもあったが割愛した。作者が10人いれば10人なりの人間の営みがある。