岩田亨の短歌工房 -斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・短歌・日本語-

短歌・日本語・斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・社会・歴史について考える

「詩人の聲」2016年2月

2016年03月04日 23時01分53秒 | 短歌の周辺
天童大人プロデュース「詩人の聲」2016年2月



1、天童大人 2月15日(月)於)東京平和教会

 天童は61回目の公演。詩集未収録の「日本詩篇」を聲に出した。作品の内容もさることながら僕は天童の口元に注目した。僕が聲を出す時はどうしても力んでしまう。かなり改善出来たが、まだ力が入っている。


 天童の口元は普段話しているときと変わらないように見えた。力んでいないのはこのせいだろう。聲が大きいのは力んでいるからではなく聲そのものに力があるからだ。僕は力みをとるのに苦労する。運転免許を取る時がそうだったし、短歌を詠むときもそうだった。読み方をさらに工夫したい。


 作品は言葉の省略が効いている。無駄な言葉がない。ただ言葉を連ねては散文になってしまう。言葉の省略が詩の成立の条件だろう。また作品群には、真実とは、社会とは、芸術とは、人間の生と死とは。こういう事への掘り下げがある。ここも学ぶべき所だろう。


2、渡ひろこ 2月22日(月) 於)キャシュキャシュダール


 渡は9回目の公演。聲がでるようになった。だが作品は様々な傾向が混在している。「ルワンダ」など社会に取材した作品があるかと思えば、デカダンなものもある。短歌で挽歌にあたる追悼詩もある。

 どれが渡の作風なのだろう。世俗的な言葉は減って来た。だが追悼詩はエッセイと聞き間違うほど、省略できる言葉が多い。天童からもその辺を指摘されていた。


3、秦ひろこ 2月23日(火) 於)キャシュキャシュダール


 秦は19回目の公演。詩集を意識して作品を読んだ。力みのない、スムーズな言葉と聲で独特の世界を作っている。鳥や事前に素材を求めているが、真綿で包むようなやわらかい言葉で織りなす作品群だ。地方色もある。

 懐かしい望郷の念があり、故郷への愛おしみが感じられる。何より大きいのは不自然な暗喩が消えたことだ。しかも作品の中に自分を見つめ、自分に問いかけるものが表現されている。

 第1回から比べると段違いな進展だ。新詩集が期待される。


4、筏丸けいこ 2月26日(金)於)ブックカフェ21世紀


 詩集『モリネズミ』刊行記念の公演。(37回目)『モリネズミ』を読むのは前回のギャラリー絵夢と同じ。詩集の全作品を読むのは時間の制約で出来なかった。

 代表作を読んだのだが、不思議な詩集だ。秘密の宝箱、びっくり箱のような作品だ。暗喩が多いが不自然な感じが全くしない。その暗喩が平凡でなく「次にどんな言葉が出て来るか」が聞いていて楽しい。

 しかも暗喩が人間や社会を暗示しているところがある。言葉のリズムも軽快だ。筏丸は祭り好きの江戸っ子の風采がある。都々逸の研究もしている。こういう資質が作品に現れているのだろう。



 今月も多くの発見があり、多くのことを学んだ。





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