岩田亨の短歌工房 -斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・短歌・日本語-

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現代のリーダー論:経済危機にあたって

2012年02月16日 23時59分59秒 | 政治経済論・メモ
安部、福田、麻生、鳩山、菅と5代続けて首相の在任期間が約1年の状態が続いた。国会のねじれ現象も続いている。法案の成立割合も低い。野党第1党の国会質問も、何か「上げ足取り」に聞こえるものが多い。なぜなら与党も野党第1党も消費税増税などほとんど政策の差がないからだ。

 政治経済の閉塞感が強い。そこで聞こえるようになったのは「政治家のリーダーシップ」。大阪の H 、名古屋の K 、東京の I 。横浜の「開港博」で巨額の赤字を出し逃げ出すように国政に進出しようとした N が大阪に副市長に招かれるとか何とか。だが「リーダーシップ」の旗手のように言われる人たちが何をしようとしているのか、よく分からない。「大坂都」を作っても、それは行政制度の問題。問題は政策内容だろう。

 ユーロ圏の金融危機の終息が見えてこない。国債の値下がりが止まらない。かく言う日本もうかうかしていられない。立て続けに為替市場などのシステムトラブルがあった。こういうことをきっかけに、日本の国債が暴落しないとは誰も断言できない。


 すると日本の財政赤字は早急に何とかせねばならない。だが税収は国家財政の半分。増税は避けられない。問題はどの層から徴収するかだ。消費税はいかん。財政赤字解消には、税率25%が必要と言われる。(「朝日新聞」2月6日付)

 だが消費税は低所得者の生活を直撃する(戻し税方式は非課税世帯には負担だけが残る)し、国内消費を冷え込ます。これは橋本内閣で3%から5%に税率を引き上げたとき証明ずみだ。当時の首相秘書官がいまは弱小野党に移って必死に反対している。

(彼が無所属のとき、駅前で僕は直接、「橋本内閣時代の失政の責任はどうするのだ」と質問した。彼は苦虫をかむような顔をしていたが、それ以来彼は消費税増税反対の側にまわったらしい。)

 ある試算によれば、消費税率が4倍になると国内消費は1/4になるという。これは絶対だめだ。

 ではどうするか。富裕層への増税しかあるまい。そうでなければ僕など飢え死だ。ではどこからが富裕層か。僕は年収2000万以上が妥当なところかと思うがどうだろう。(国会議員の歳費が現在、1560万円+期末手当。)僕の父は年収1000万に満たなかったものの、息子二人を私立大学に通わせた。相当家計は厳しかったようだが。

 よくテレビでタレントやコメンテーターが、「消費税増税はやむを得ない」というが、あてにはならない。売れっ子タレントやテレビ出演の多いコメンテーターは例外なく高額所得者だ。主張をそのまま鵜呑みには出来ない。

 それとTPP 。これは交渉を凍結してはどうか。のらりくらりでもいい。それは戦前の金解禁の教訓があるからだ。第1次世界大戦後、主要国は相次いで金解禁(=金輸出解禁=金本位制への回帰)に踏み切った。金の保持を担保に国際競争力をつけようとしたのだ。日本は当時、帝国議会で政争が盛んで、政治が停滞していた。そしてやっと日本が金解禁に踏み切ったのは、世界恐慌の真っ最中。国内の金が海外にたちまち流出した。

「嵐のなかで窓を開けたようなものだ」とは後世の歴史家の評価。

 日本は他の国に遅れて TPP 参加を表明した。輸出振興のためだ。何から何まで金解禁にそっくりだ。

 つまり、「リーダーシップ」と言っても、中味が問題なのだ。かつて経済の閉塞状態のドイツで、「強いリーダーシップ」を持っているかに思われた男に、ドイツ国民は国政をゆだねた。それがヒットラーであったのを忘れてはなるまい。

 ともあれ政治経済の動きから目が放せない。僕の家の新聞は切り抜きだらけになった。こういう状態が当分続きそうだ。

 ヨーロッパでは現在の経済状態は「世界恐慌」と言われているそうだ。岡井隆の言う「国家や国民のありかたの変る時」(「短歌」2011年2月号)が迫っている感じがする。




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