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岩田亨の短歌工房 -斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・短歌・日本語-

短歌・日本語・斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・社会・歴史について考える

2013年の作品より:5首抄出

2013年12月30日 23時59分59秒 | 岩田亨の作品紹介
2013年 5首抄出


・シリウスを天狼星とよくぞ言うかくも冷たくかくも明るし・「星座」


・サラダ菜のみずみずしきを食べながらアンソロジーの頁を送る・「運河」


・遠き世のカリフのごとき顔をして説く人ありき静かな部屋に・「運河」


・復讐の女神ネメシスに似る女そ知らぬ顔にとうとうと話す・「星座α」


・遥かなるバベルの塔のごときビル国籍不明の人らが歩く・「星座」



 一首目。シリウスは「おおいぬ座」の一等星。全天の中で最も明るく見える。この清涼感が好きで、僕は度々短歌のモチーフとする。

 二首目。僕の部屋にはアンソロジーが、五冊ある。高野公彦、岡井隆、永田和宏、小高賢、篠弘。様々な選者だが、それぞれ独自の視点があって面白い。

 三首目。人を皮肉った、意地悪い歌だ。だが何故か捨てられない。「私のことですか」と聞いた人がいたが、その人ではない。いわば「知ったかぶり」をする人すべてに普遍化したつもりだ。

 四首目。「ネメシス」とはギリシャ神話に出て来る女神。人間の悪を懲らしめる紙、本によっては、復讐の女神とある。ここでは後者をとった。これも特定な人物ではなく、普遍化された人間である。

 五首目。「バベル」は「バビロン」と同じ。聖書には、月に届く塔を人間が作ろうとして、紙の罰として、言葉が通じなくさせられた、とある。それまで人間は同一の言葉を使っていたが、この時より言語が分化した。何やら教訓めいていて僕はこの話を好む。近年、異国籍の人を街頭で見かけるのが多くなった。それを詠んだ。


 こうしてみると、カタカナ語が目立つ。近年のぼくの嗜好らしい。「和文脈で詠え」という大家に怒られそうだ。だが正岡子規は言った。「日本人が作ったからは、例えサンスクリット語であっても、日本人の詩で、これあり候」(歌よみに与ふる書)





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