「日本国憲法第九条」にはどのような意義があるのだろう。いくつかの項目にまとめてみよう。
1、「憲法第九条」の軍事技術的意義:
憲法第九条は、軍隊と戦争が伝統的な意義を持ち得なくなったとの認識を示すものであった。伝統的には、軍隊と戦争とは、外国の侵略から国家の独立と国民の人権を守る最後手段として、国家に不可欠なものと考えられてきた。世界の大多数の国は、今なおこの考えをとっている。憲法第九条は、広島、長崎の経験をふまえて、軍隊と戦争とがそのような手段としての性格を持ち得なくなったとの認識に立ち、伝統的な考え方と決別することを示すものだった。
2、「憲法第九条」の歴史的、政治的意義
憲法第九条は、軍隊と戦争とが人権を破壊する手段となり、平和こそがその享受のための不可欠の前提条件となっていることを認識している。また、軍隊と戦争とが国家の独立と国民の人権保障との手段となり得なくなったことを認識すると同時に、積極的に国際平和を創造することによって、それらを確保しようとすることを意味するものだった。このことは、幣原喜重郎、吉田茂の答弁に明確に表れている。加えて、日本国憲法と共に生まれ変わった新生日本の国際社会における存在理由と役割とを明示するものだった。また、日本の戦争責任の証としての性格も持っている。
3、「憲法第九条」の経済、財政的意義
軍拡の政治は、経済体制のいかんに関わらず、経済と財政を疲弊させ、人権の保障に不可欠な社会と政治の安定を根底から破壊する。資源とエネルギーを欠き、食糧さえも自給出来ない日本がこれほどの国際競争力を備えることが出来た一大要因として、憲法第九条の役割は大きかった
。軍事費は非生産的な性質を持ち、経済効率が悪く、多額の赤字国債の原因ともなる。以前のアメリカがそうであったし、アメリカの宇宙物理学者カール・セーガンもその著書「コスモス」の中でそう書いている。
この3つの「意義」を持つ「憲法第九条」をふまえた「国際貢献」は、どのような形がよいのだろう。
1、憲法第九条に初心と世界の趨勢を確認し、率先して軍縮を断行し、不戦の誓いを堅持すること。
2、アジアで軍縮、不戦、非核化のための条約締結とそのための国際機構の樹立を呼びかけ、その実現に全力をあげること。
3、発展途上国に対して、経済、技術援助、食糧、医療、教育援助、難民・災害の救助活動、学術・文化交流、地球的規模での環境の保全、人権、民主主義、独立等の価値の国際的な発展に寄与を、抜本的に強化する。
こういう議論に対して、「アメリカへの協力」という「対米配慮論」がある。しかし、
1、日本が独立国として、その憲法に従って、政治を行う事は当然の事であり、立憲主義を大切にするアメリカの理解を当然得られるはずである。
2、しかも、憲法第九条は、アメリカを中心とした占領下で、アメリカのイニシアチブとアメリカの同意のもとに制定されている。アメリカは、憲法第九条については、本来それを批判出来る立場にない。
以上の事を、まとめると次の様になるだろう。日本国憲法の三原則。
国民に主権があること、主権者の基本的人権は最大限尊重されるべきこと。基本的人権が最も危うくなるのは、戦争であるから、それを放棄する事。これを政府に国民が命令しているのが、日本国憲法であり、立憲主義であるのだ。
参考文献:杉原康夫著「憲法第九条の時代」「平和憲法」「憲法読本」、カール・、セーガン著「コスモス」