「運河の会」東京歌会 2015年7月12日 於)早稲田奉仕園セミナーハウス
「運河の会」東京歌会は以前は東京研究会と呼ばれていた。運営同人だった長澤一作、川島喜代詩が中心となって表現の新しい開拓を目指していた。だが二人が研究会に主席出来なくなって、同じ運営同人の山内照夫の教室になっていた。
山内照夫没後、全員で意見を出し合う研究会のようになっていた。今は代表の佐瀬本雄が指導しながらの研究会、作品批評会になっている。
出詠者は東京在住の「運河」の会員。第二日曜が定例会の日程となっている。ここでは主に言葉の使い方、文法上の事項を学び、着眼点の拡大をはかっている。
どちらかというと古風な詠いっぷりの人が多く、この着眼点で自分ならこういう角度で、こういう表現をすると刺激されている。
植物を詠む人も多く、植物の学習にもなっている。だが一番の魅力は、良い意味で短歌らしい短歌を詠んでいることだろう。ライトバース、ニュウウェーヴの影響、前衛短歌のテクニックのみの影響が皆無である。
これは現代短歌にとって重要なことだ。前衛短歌は短歌史の一時代を画した。短歌の表現領域も広げた。ライトバース、ニューウェーブも同じ。だがマイナスの面もある。
前衛短歌のテクニックのみの継承、ライトバース、ニュウウェーブの主題性の希薄さ。こういうものは、現代短歌を「奇を衒う、軽い感想文を述べる」ことに追いやった。
人間が描かれていない、ツイッター的短歌、軽いだけの短歌。馬場あき子、尾崎左永子、岡井隆が警鐘を鳴らしているとおりだ。
ここで学びながら新境地が開ければ、かなり重厚で高質の作品の創作が可能だと思う。短歌界の現況については「詩人の聲」に参加する詩人と認識が一致する。
目指すは、主題を持ち、現代の人間や、社会に鋭く切り込む、短歌の創作だ。母校、早稲田大学の文学部キャンパスの近隣でもある。
地理的にも創作の方向性としても、価値のある歌会だ。