・冬の苺匙に圧(お)しをり別離よりつづきて永きわが独りの喪
「さるびあ街」所収
自己凝視の深い作品だ。「別離」は「作者の離婚」。「つづきて永き」から忘れ得ぬ悲しみを噛みしめている様子が読み取れる。「わが独りの喪」が作者の孤独を際立たせる。
それを象徴しているのが「冬の苺」と「匙で圧(お)しをり」だ。「悲しみの心」を更に際立たせる。「冬の苺」の寂しさ・冷たさ。「匙で圧(お)しをり」悲しみをブツブツと嚙みしめている印象が深く刻まれる。
どれを取っても、隙の無い語句選びだ。こういう徹底さに圧倒される。尾崎左永子の代表作のひとつだ。