・内乱のみじかき記事をよみしがど乾きし砂に花の種蒔く
「彩紅帖」所収。
昭和32年から昭和42年までに発表された作品群。刊行は平成2年。「さるびあ街」再刊を機とした歌集だ。第二歌集「土曜日の歌集」の冒頭につなぎの意味でこの時期の作品、80余首を「彩紅帖」として抄録したという。それを拡大して歌集にまとめたのだから、作者には余程こだわりのある作品群なのだろう。
さてこの作品。「内乱」の記事を読んでいる。スエズ動乱だろうと僕は思うが特定されていない。捨象されているのだ。
下の句は砂漠の砂に花の種をまく印象。どこの砂かはわからない。花の名前もわからない。これらも捨象されている。
捨象は個別具体的なもの形を捨てて本質をつかむという哲学用語。作者の「現代短歌入門」で短歌に必要と書かれている。
個別具体的なみのを捨象することで、「感動の中心」が際立つ。
動乱の砂漠に花の種をまく。ここから、作者の平和ねの希求を僕はかんじる。