岩田亨の短歌工房 -斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・短歌・日本語-

短歌・日本語・斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・社会・歴史について考える

祠まで訪いゆくはわが慣いにてその祭神の名前を知らず

2010年01月01日 23時59分59秒 | 岩田亨の作品紹介
「夜の林檎」所収。

体調のよいとき僕は散歩をする。家の近所を30分くらい歩く。街の一角に小さな児童公園があって、その隅に祠がある。公園の名には、「池」の文字がつくのだが、池はどこにもない。町なかのミステリーである。

 聞いてみると、大規模団地を造成するときに埋め立てたのだそうだ。これは、歌会(批評会)で聞いた話。会員のなかには地名や郷土史を研究している人もいるから、歌会(批評会)は大切な情報源でもある。


 原作は、

・社へと訪いゆくはわが慣いにてその祭神の名前は知らず・

だった。「社=やしろ」としたので参加者はみな神社と思ったらしい。批評がひとまわりするまで作者名は伏せられている。僕は黙って聞いている。「なかなか伝わらないものだな」と思いながら。自分の作品を客観的にみるチャンスとも言える。

 批評が終わって作者名が明らかにされたのち、自分の作品を自註する。そこで聞いたのがかの埋め立ての話だが、そこで浮かんだ言葉が「祠=ほこら」だった。

 自分では気づかないことに気づかせてくれる。そして、より適切な表現に気づく。これが、結社の批評会(=歌会)に参加するメリットであろう。

 今回の初詣は、この「祠=ほこら」になりそうである。






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