教育勅語は戦後の民主化の過程で排除された。それも二重に。
第一は憲法前文の規定。「わららはこの憲法に反する、すべての法令、政令、および詔勅を排除する。」第二、衆参両院の国会決議によって無効が宣言された。
兄弟、親子、友人と仲良くせよ。こういう内容が教育勅語には書かれている。「爾(なんじ)臣民、父母に孝ニ、兄弟ニ友ニ、夫婦相和シ、朋友ヲ相信ジ、・・・・云々」の部分である。ここの内容はいいではないかと言い出す人が出てきた。若い歌人のフェイスブックでも書かれている。この歌人が「時代の危機と向き合う短歌」のシンポジウムに深く関わっている歌人だから驚く。こういう歌人が出てくるところに時代の危機があるのだが、本人は読んで心地よいとまで言っている。
教育勅語はなぜ戦後に排除されたか。それは日本国憲法の趣旨に反し、民主主義、平和主義に反するからだ。教育勅語には次の規定がある。「一旦緩急アレバ義勇公に奉シ、以テ天攘無窮ノ皇運ヲ扶翼スへシ」つまり一朝ことが起これば天皇のために尽くせ」というのだ。軍国主義の時代にあっては「天皇のために戦場に赴く」ということを意味する。
この規定が民主主義に反するのは言うまでもない。平和主義にも反する。教育勅語は戦前小学校でうやうやしく読み上げられた。読み間違った校長は進退伺を出すほどだった。学校が火災になっても生徒の安全より、校内の奉安殿にあった天皇の写真と教育勅語を持ち出すのが優先された。教育勅語は軍国主義思想を生徒に刷り込む役割をはたした。
「夫婦相和シ」といってもそれは男尊女卑のそれであり、「親子相和シ」といっても封建的家父長制度のそれである。家制度は天皇を頂点とする国家の支配の末端であり、その機能を強制する性質のものが教育勅語だ。
同じ時期に治安維持法があった。思想弾圧の治安立法だ。思想を弾圧したあと、教育勅語によって軍国主義思想が広められた。小学生が洗脳されたのだ。これを賛美する防衛大臣が「国のためには血を流せ」「戦争は魂を浄化する」と言う。何とも危なっかしい。
いま森友学園の問題が疑獄事件になりそうだ。9億もする国有地を200万円程度で取得した。政治家が介在しなければこんなことは起きまい。この学園は「安倍晋三記念小学院」の設立を申請していた。経営する幼稚園では教育勅語を読ませ、安倍首相をたたえる言葉を言わせ、児童虐待としか言えない教育を行っている。戦前の海軍式の訓練だ。
この学校の名誉校長に安倍首相夫人がつい最近まで就任していた。金銭の授受はなかったと首相は言ったが、講演料をもらっていたことが発覚している。この学校の教育方針を安倍夫妻は激賞していた。これが安倍首相の言う「美しい国」なのだろうか。何とも醜い姿だ。
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