ー国民に弔意を強制してはならないー
安倍元首相の「国葬」を、9月27日に日本武道館で行うことを岸田内閣が閣議決定した(7月22日)ことに、私たちは強く抗議いたします。
与党の幹事長が、「国葬」の理由を「多くの国民が望んでいる」との趣旨の発言をしていますが、複数の報道機関の世論調査で、「国葬」に反対が「国葬」に賛成を上回っており、もはや「国葬」を「多くの国民が望んでいる」とは言えなくなっていることは明らかです。「国葬」の根拠はすでに崩れています。
長期政権の功罪も賛否両論で、モリ・カケ・サクラによる安倍元首相の退陣は国民の政治不信を深めたことは論を待ちません。何よりも、殺害の動機が政治的な信条などではなく、カルト教団の広告塔に対する怨恨であったことが明らかになった以上、安倍元首相の生前の政治家としての姿勢が問われることになりました。「国葬」の強行は日本の歴史に大きな汚点を残すことになります。
葬儀・弔いは本来宗教的教義に基づく行為であり、国家権力によって制約されるものではありません。戦前の「国葬令」は、諸宗教の上に国家神道が置かれた、天皇制国家主義の明治憲法下での法令であり、現憲法は第19条で「思想・良心の自由」が保証され、第20条で「信教の自由」が表明されています。国民の弔意が権力によって強制されることがあってはならないのです。政権に参加している公明党は何故沈黙しているのでしょうか。率先して「国葬」に反対すべきでしょう。
岸田内閣は安倍元首相の「国葬」を政治利用して権力強化の契機にしようとしていることが窺えます。その方向は現憲法の平等なる人間の自由と尊厳に対する冒涜です。日本の民主主義の根幹を揺るがす危険な判断と言えましょう。
私たち諸宗教者は、安倍元首相の「国葬」閣議決定撤回を求めます。
2022年8月18日
平和をつくり出す宗教者ネット(日本山妙法寺内)
署名:
仏教20名、カトリック5名、プロテスタント19名、神道9名。