73回目の憲法記念日 2020年5月3日.
1947年5月3日、日本国憲法が施行された。ことしで73回目の憲法記念日を迎えた。今年の憲法記念日は近年にない緊張感のもとだった。
新型コロナウイルスの緊急事態宣言がだされているので大規模集会はなし。例年5万~7万の憲法集会もオンラインで行われた。「憲法を守り活かす」のを訴える集会で、「改憲派」の集会は例年屋内集会だ。
この違いを無視して、双方を同じ比重で報道するマスメディアの姿勢には疑問を拭いきれない。改憲派は圧倒的に少数勢力なのだ。世論調査でも「改憲」は実施すべき政策の優先順位が低い。これを先ず確認しておきたい。
さて今年の憲法記念日の緊張感は、新型コロナウイルスの非常事態宣言があっただけではない。「改憲項目」が具体化しているのだ。内閣に憲法改正の権限はない。改憲の民意も少数派だ。しかし、安倍内閣は「改憲」に前のめりだ。これ自体が、民意と乖離し、憲法改正のルールに反している。
さらに自民党「改憲案」の内容。項目は4つ。
1、憲法9条に自衛隊を明記する。
2、緊急事態条項を導入する。
3、参議院選挙の「鳥取島根」「徳島高知」の合区を解消する。
4、教育の無償化を明記する。
ここには大きなな問題点がある。
1、憲法9条への自衛隊の明記。憲法9条には1項、2項で「戦争の放棄」「戦力の不保持」「交戦権の否定」が明記されているが、これに第3項を加え「自衛のための実力部隊として自衛隊を保持する。前項の規定に関わらず自営の措置をとることを排除しない。」と書き加えるのだ。これでは憲法9条の三つの原則が死文化する。自民党の幹部の発言では「憲法9条をなくすのが目的」と公言してはばからない。
憲法9条をいきなりなくすのには国民の間に抵抗感があるだろうから、まずは憲法に自衛隊を書き込もうという思惑だ。これは極右組織の「日本会議」のブレーンが考え出した戦略。危険な落とし穴だ。
2、憲法への緊急事態条項の導入。新型コロナウイルスの緊急事態宣言と同じように考えている人が多いが。これは大変に危険。大規模災害などが起こった場合に、内閣総理大臣の判断で、法律と同じ効力を持つ政令が制定でき、選挙の延期が実施できる。これは法律の停止、議会の停止である。憲法の停止にもつながりかねない。
戦前のドイツには当時最も民主的と言われたワイマール憲法があったが、これをナチスは、緊急事態条項の発令→全権委任法の制定により「多数決で独裁政権「を樹立した。憲法に緊急事態条項を導入するのはナチスの手法がだ。
3、「合区の解消」。「鳥取島根」「徳島高知」と言う選挙区をそれぞれの県単位に独立した選挙区にしようということ。合区としたのは「1票の格差が違憲状態」という判決を受けてなされたもの。この合区を憲法で解消するのは「憲法違反のことを憲法に書き込んで、合憲化すること」。憲法無視も甚だしい。
4、教育の無償化。民主党政権が「教育の無償化」を実施しようとしたとき、自民党は反対している。ではなぜ今になって。ハードルの低いところから改憲をしようとする「お試し改憲」の思惑が見えてくる。教育の無償化を実現するには、既存の法律を改正すれば済むこと。
こういう問題だらけの内容だ。これが実現されてしまうか、食い止められるか。ここ数年で決まる。形式上、議会を残し中身はファシズム。かつては「日本型ファシズム」と言われた内容。
そもそも日本国憲法は完全実施されたことがない。日本国憲法の内容を生かした政治の実現が重要だろう。