叙情の深さと感覚の鋭さ
戦争が始まった。私などショックが大きく、新作がほとんど詠めなくなってしまったのだが、会員諸氏の健詠ぶりに驚かされた。
・(思いを文字に書きゆく歌)
・(小舟のような心の歌)
境涯詠をまず2首。生きて来れば、忸怩たる思いのいくつかはあるだろう。それを愚痴でなく作品化したがよい。1首目の下の句の言い切りと、2首目の上の句の比喩が効いている。
・(風に気配を感じる歌)
・(梅の実がかすかに揺れる歌)
叙景歌を2首。景が顕ち、視覚、触覚が敏感なのがよい。作者は心を研ぎ澄ましているのだろうか。
・(カステラにブランデーの歌)
・(桜の老木の歌)
・(春の雨の歌)
独自性を強く感じるものを3首。1首目は独特な作風となり、2首目は風格を感じる。3首目は下の句の捉え方が独特で深い。
・(琥珀の光る歌)
・(ガラス戸に写った自分の顔の歌)
1首目、透明感があり、2首目は自己凝視が深い。
・(ティーカップの中に崩れ行くものの歌)
下の句が深く、表現が巧みである。