天童大人プロデュース「詩人の聲」2015年4月
1、紫圭子 4月3日 於)ギャルリー東京ユニマテ
紫は33回目の公演。聲が波動となって聞く者の体内に響いてくる。安定した聲。揺るぎないリズム。聴いていて心が洗われるようだ。まるで謡曲を聴いているようだった。
作品は20代のものから始まり、古典に取材した劇詩も読まれた。日本文化のたおやかさの趣きがあり、郷土の文化と歴史や伝説を作品化。作者の精神世界を掘り下げるものだった。自然への畏敬の念、時代と人間、経験した不可思議な体験も作品の素材となっていた。
聲に美しさと艶がある。美しい言葉で華麗な作品群だった。
2、天童大人4月13日 於)NPO法人東京自由大学
天童は51回目の公演。会場のガラスを破らんほど聲に力がある。『長編詩 ピコ・デ・ヨーロッパの雪』(「詩人の聲叢書・第1巻」)刊行まえの最終確認として読まれた。先品の内容は書評を参照して頂きたい。イラン、イラクなどの国際詩祭に招待参加するほどだから、聲はノーマイクの野外でも響くほどの勢いがある。
参加詩人は多いが天童ほど、力強い聲を出す詩人はいない。
詩集はAmazonで間もなく販売が開始される。
3、原田道子 4月16日 於)ギャルリー東京ユニマテ
原田は48回目の公演。天童、紫、原田はほぼ聲が出来上がっている。リズムも揺るぎない。エキゾチックな言葉遣いで、シャーマニズム的世界を構築している。自然崇拝と神への祈りがあるが、平和への願い、社会への鋭い視線もある。人間の葛藤を描いた作品も。
詩の作品の中で、人間や社会を深く掘り下げている。何より作者の宇宙観、世界観が表現されている。それが作品の厚みとなっている。
4、柴田友理 4月18日 於)キャシュキャシュダール
柴田は31回目の公演。自己主張する人間、生き方を模索する人間、生きる意志を強く持つ人間、孤独な人間。人間を掘り下げる作品が多かった。旧作は器用に言葉を並べた感がぬぐえなかったが、そういう傾向が消えた。
タイトルや言葉遣いは旧作と同じだが、表現内容が様変わりして厚みを持つようになった。自身でも聲を出すたびに作品が変わってくると自覚している。
5、長谷川忍 4月21日 於)ユニカギャラリー
長谷川は26回目の公演。新詩集を念頭に作品を磨いている。新作は現代の人間の葛藤、私とは何者かという問い、人間の営み。人間を描く傾向が強まって、作品の中心軸が定まった印象だ。
安定した聲、揺るがないリズム。圧巻は川崎の工場労働者を描いた作品。都市の情景描写はあるが、それは作品の背景で、人間がより中心になってきた。
6、清水弘子 4月22日 於)キャシュキャシュダール
清水は11回目の公演。新作が中心に読まれた。作品は、自然への畏敬の念、人生の転機、自分の葛藤、望郷の思いが表現されている。第一詩集、第二詩集、第三詩集とは違って、作品の主題が鮮明になってきた。
新作を読みながら、作品のテーマを考えるようになったのだろう。最後に第一詩集から6作品が読まれた。どの作品が読まれるのか注目したが、現在の作者の方向性と合致した作品が読まれた。おそらく確かなものが作者の中で形成された違いない。
7、文屋順 4月27日 於)キャシュキャシュダール
文屋は5回目の公演。時々聲が淀むが聴いて心地よい。
作品は主題が今一つ明確に伝わってこない。言葉が多すぎて、抒情の質が明確になっていない。散文的で、行儀よく言葉が並んでいるという印象がぬぐえない。平凡な言葉の羅列もあった。だがまだ公演5回目の節目だ。
旧作を読み終わって、新作を聲に出すようになってからの勝負だろう。文屋には公演回数20回以上の詩人の聲を聴くのを勧めたい。