・うつむきてため息をつく汝(なれ)にしてわれは言葉なく佇むのみぞ
知り人がため息をつきうつむいていた。何か人に言えない悩みがあるらしい。僕は、無言で見守るだけだった。
・寝室の壁にもたれてもの思う由衣の背中に秋の日が差す
由衣が誰なのかは問題ではない。知り人が深刻なさまでうつむいていた。彼女の背中には、秋の日が静かに差していた。
・山門の開かぬ扉に身を寄せてうつむく汝(なれ)は何を思うや
寺の山門に身を寄せながら、考え事をしている人がいた。何を考えていたのだろう。
・散り続く紅葉を両手に受けながら笑みを隠さぬ由衣は美し
二首目の人物。悩み・考え事があろうものを、散る紅葉を両手に受けながら、無邪気に遊ぶ姿は忘れがたい。
・柿の実がたわわにみのる枝のした吹き来る風がことに冷たし
説明はいらんだろう。秋は寂しい。別れの季節でもある。
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