兵器産業。いまの日本ではピント来ないかも知れない。だがアメリカでは産業構造の中核に兵器産業が位置づいている。兵器産業の利益は巨大だ。ミサイル一基が数億円。飛行機一機も数千万から数億円。
「失われた10年。失われた20年。」と呼ばれ、日本が不況から抜け出せなくなって久しい。「アベノミクス」の成長戦略も定まらない。
そこで浮上してきた産業が二つ。兵器産業と原子力産業とだ。ともに一回の取引の価格が高く、GDPを押し上げる。経済政策に行き詰った政権が振興に力を入れるのも当然と言える。
戦後の高度成長を支えたのが、朝鮮特需、ヴェトナム特需だった。戦争は巨大な消費を生み出す。実際に戦争が起これば、食品、衣料品、医薬品、自動車業界さまざまな業界が潤う。だがここで考えるべきは「戦争」は殺人であり、国際社会では違法行為とされていることだ。
国家には自衛権がある。だが歴史上の専制攻撃は、国家の自衛を名目に行われてきた。まして集団的自衛権は、大国の侵略戦争に使われてきた。すでに何度も述べたように、国家に固有の当然な権利ではない。
景気の浮揚のために兵器産業を振興するのは危険だ。しかも武力による「武力抑止論」は際限のない軍拡競争につながる。いま求められているのは軍拡ではなく軍縮だろう。「テロとの戦い」が、大義名分にされているが、戦争でテロはなくせない。
「中国脅威論」も荒唐無稽だ。「武装しなければ日本はチベットのようになる。」これは中国が内政問題と考えているもので、日本に攻めてくる理由にはならない。しかもこれには、武装革命の拡大、中国の膨張主義、覇権主義が背景にある。
中国は武装革命の路線をとってはおらず、歴史的にも日本は中国の領土だったこともない。「中国脅威論」は荒唐無稽だ。
また原子力産業。これはアメリカの核弾頭の更新に必要だといわれる。「核弾頭は生ものだ」という言葉がある。アメリカの核弾頭は定期的に更新する必要がある。これには原発で生産されるプルトニウムが欠かせない。こういう面からみると、原子力産業も兵器産業の一部だ。
首相は外遊の度に「安全保障のパートナーシップ」として、武器を売り込み、原発を輸出してくる。事故があった場合の補償は日本がするという条件で。これは看過できない。
2014年の武器見本市に出店した企業には、三菱重工、川崎重工業、日立制作所、東芝、NECなどがある。そして、これらの企業の多くは、原子力発電所の原子炉本体やタービンなどを生産している。