鈴木貴子、細川晶生(PACO y TAKACO) 於)スオーロダルスオーロ(市ヶ谷)
このユニットのライブを聞くのは4回目。初めての時は「鈴木貴子ライヴ」と記事のタイトルを付けたので(3)となっている。
声楽を学んだ本格派ソプラノの鈴木貴子と実力派フラメンコギタリストの細川晶生。二人が独特の音楽を作っている。この日はバレンタインライヴだった。僕一人で行ったがFBの友人と相席させていただいた。
この日は第一部と第二部に分かれていた。
第一部はラブソングやしみじみとした曲が多かった。バレンタインデーにちなむ構成だろう。だが聞いていて前回との違いがすぐに分かった。二人が相手の声や音を聞いて相手を引き立てようとしている。これは表情でもわかる。歌ったり演奏したりしているときに相手の音に聞き耳をたてている。演奏するときも鈴木貴子の声を聴かせる場面、細川晶生のギターを聞かせる場面があってお互いを引き立てている。選曲にも工夫を凝らしているのがわかった。
第二部はいつもの曲目。「ダニーボーイ」「サマータイム」など。鈴木貴子のソプラノと細川晶生のギターを活かしたお気に入りの曲が続く。ここでも二人の息があっていた。鈴木貴子の好きな曲、細川晶生の好きな曲を互いに紹介していた。トークも鈴木貴子ひとりでなく、細川晶生とのクロストークになるころもしばしば。これは練習でできるものではない。
ぼくもトークがクロストークになったことがあるが、いずれも咄嗟にそうなった。クロスさせようと思ってもクロスしない場合もある。予め計画していても予定通りいくものではない。
第二部でもソプラノを聞かせる場面とギターを聞かせる場面があった。ユニットとして進化しているようだ。
第一部と第二部のインターバルに小さなハプニング。厨房の方から「お肉、お肉」という鈴木貴子の声。室内のあちこちでクスクス笑いが起こった。理由を聞いてみると、食事のBGMに細川晶生が演奏していたギターを店の人が演奏の最中がからと言って、出来上がった料理をくばらなかったのだそうだ。たしかに贅沢なBGM。ユーチューブの再生回数が多い細川のギターを聞きながらの食事だ。客はギターに聞き入っている。僕も「肉は」と思ったが、誰も苦情は言わない。そこで鈴木の「お肉」の声となったのだ。
ギターの生演奏。特に「アルハンブラ宮殿の思い出」が見事だった。これは僕の高校時代にギターアンサンブルの部長が代々引き継いで、「新入生歓迎会」「卒業生を送る会」でソロ演奏をする。初めて聞いた新入生が「一人で弾いているのか?」と驚いてこの曲を聞いて入部する人もいるくらいだ。ギターの名曲で華麗でどこか物悲しい曲だ。
さて最後が「秋田の水」(秋田のさけ)。秋田公演の時に秋田の人々が酒を飲むさまが凄まじいと細川が感じて作った曲だ」そうだ。ラテンのリズム、ソプラノの魅力、民謡の要素、(フォークソングももとは民謡)。こららが独特の世界を作り出している。歌う鈴木がお転婆娘のような表情で歌う。秋田弁も満載、秋田の酒蔵の名が37も出てくる。喉に負担がかかる曲だそうだから喉を傷めないように歌ってほしい。
酒を飲む楽しさが良く表現された曲と歌い方だと思う。
そしてこの日の一番の特徴。二人が楽しんで演奏している。二人が楽しんでいるから聞いている客も楽しむ。それで二人のテンションがあがる。このユニットは確実に進化している。機会があったらまた聞きに行きたい。二人の演奏はユーチューブにアップされている。