こんなにすばらしいのに…。
「ブリキの太鼓」で知られるドイツの巨匠フォルカー・シュレンドルフ監督がミシェル・トゥルニエの小説をジョン・マルコヴィッチ主演で映画化した人間ドラマ。キリストを背負って河を渡ったという聖クリストフォロスの伝説を背景に、子どもの心を持ったまま大人になったかのような男が運命に翻弄されながらもナチスドイツの下でしたたかに生きぬくさま描く。音楽は「ピアノ・レッスン」のマイケル・ナイマン。第二次大戦直前のパリ郊外。幼い頃から内向的だったアベル(マルコヴィッチ)は自動車修理工になった今も人付き合いが苦手だったが、唯一、近所の子どもたちとだけはウマが合い楽しく遊ぶことができた。そんなある日、一緒に遊んでいた美少女がついた嘘のため、アベルは強姦罪で摘発され、戦地に送られてしまう。戦地では早々にドイツ軍の捕虜になってしまったアベルだったが、従順な性格からドイツ軍士官学校の雑用係の職を任される。やがて、子どもたちと打ち解ける姿を見た上官から、村々を回って少年兵をスカウトする任務を負わされるのだった……。ナチスドイツを美しく描くことでその恐さが一層強調されている。