屋根裏部屋の秘密 (偕成社文庫)松谷 みよ子,司 修偕成社このアイテムの詳細を見る |
1988年
直樹とゆう子の物語
の、全5作品のうちの4作めだった。
あんまり知らなくて、これを最初に読んでしまったよ。
でも、よかったかも。
祖父が亡くなる間際に、別荘の屋根裏部屋にあるもの、ダンボール一式を、孫にまかせる、若い世代にまかせる、という言葉を遺した。
そして夏休み、山荘に来たゆう子は、不思議な夢を見る。中国人の女の子。
次第に、ダンボールの中身がわかってくるにつれて、その女の子は、戦争の犠牲者の一人、とわかってくる。
祖父が戦争中にしていたこととは…
アウシュビッツと同じこと。当時、いくらでも人間は調達できた。その人間たちを「丸太」と呼んで、生体実験に使ったり、無意味に切り刻んで殺したり、ここには書けないくらい残酷なこと。
戦争中の、そのおそるべき生体実験をもとにした成果によって、戦後、医療の分野で大きな利益をあげて、祖父は会社を大きくしていった。
私たちには関係のないこと、って、若い世代は言いたいかもしれない。
でもさ、その成果で作られた薬とかを使ってるんだったら、関係ないわけないよね。
ここで、間違えてはいけないのは、そんなことをした個人個人が責められるものではない、ということ。
だって、反対したところで、殺されるだけだし、別の人材が来るだけだし。
戦争という狂気の中に入ってしまったら、私だってあなただって、こんなことは絶対にしないとは言い切れない。
では、何が私たちを支配していたのか?or支配しているのか?
それは、国家である。
あーあ、こんなことをしておいて、してないって言い張って、また戦争をする国になろうとしているわが国が情けない!
バカすぎる!
このシリーズの、最初の方では、原爆だったり、戦争の被害者である日本、というのが強く出ていたけれど、これの前の作品からは、加害者である日本、というのが色濃く出てくるんだって。
それは作者の認識が変わってきているということ。
日本は日本のアウシュビッツを持っていた、という事実を知ったから。
で、七三一部隊の隊員であった人と知り合ったことで、その事実を深く知るようになった。
そのお話をもとにして書かれたのが、この作品である。
もちろん、松谷みよ子さんの作品なので、小学生くらいから読める文体。
こういうの、子供たちに読んで欲しいわ。
そして、戦争に立ち向かう人間になって欲しい。