観測にまつわる問題

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中国の遅れてきた進出

2011-01-17 22:05:03 | 日記
東南アジアのニュース

>インドネシア中部ロンボク島で開かれていた東南アジア諸国連合(ASEAN)の非公式外相会議が17日、閉幕した。議長国インドネシアのマルティ外相は記者会見し、2002年に武力行使禁止や資源共同開発などを目指して中国と署名した「南シナ海の行動計画」の実効性を高めるため「早急にガイドライン(指針)を策定しなければならない」と強調した。

日本に(少なくとも現在)直接は関係が無い南シナ海問題だが、中国と海洋進出は(尖閣問題で明らかなように)日本にとって極めて重要な問題であるので、ここで考察しておく。

①中国は歴史を持ち出して南シナ海の島々全ての領有を主張しているが、これはほとんど根拠が無い。尖閣の時も触れたが、中国は明清代に海禁政策を採っており、まず国家の意志として遠い島々を領有する意志を持っていないことはあまりに明白である。中国は鄭和(明)を持ち出している上、その前の元代はモンゴル帝国であり、宋代以前の支配もその発展度から考えられない(例えばより近い台湾に中国人がオランダ統治下で移民したのは明代である)。フィリピンはスペイン。マレーシアはイギリス。ベトナムはフランス。周辺東南アジア諸国は全て西欧列強の支配下だった時期があり、中国の海洋進出の不活発さは歴然としている。

②南シナ海の島々を初めに有効に支配したのはフランス及び日本である。南シナ海の島々はほとんど人が住める環境になく、自然に領有を主張できる国は世界中何処にも無い。明白にこれらの島々を支配する意志を持ち行動に移した、つまり先取したのはフランスであり、日本であった。ただし、両国とも現在これを放棄しており、後継国家は事実上存在しない。日本は新南群島としてこれらの領土を台湾に編入したが、台湾は少なくとも現在一つの中国を自ら主張する国(地域)であり、日本時代の権利を何処まで主張できるかは疑問がある。ベトナムもフランスの支援する南ベトナムを滅ぼして統一した国家であり、フランス統治時代の権利を言うのは疑問だ。

③領土問題は自ら放棄しない限りにおいて、何処が先に(有効に)支配したかで正当性を主張できる。例えば鬱陵島は韓国の伝統的な領土(有人島)であったがゆえに、空島政策下(460年以上無人島であった)でも徳川幕府に対し正当性を主張できた。それに対し竹島が韓国の領土であったという事実はなく(遠方のただの岩山を支配しようという酔狂な国家は近代以前に存在しない)、日本が先取した竹島を韓国が戦後のどさくさに紛れて不法占拠した経緯は明らかである。話を南シナ海に戻すと、竹島同様、ベトナム・フィリピンがフランス・日本撤退後に先に占拠した島々を中国が不法占拠した経緯は明らかである。日本のように国際司法裁判所に提訴するなど平和的な解決が望ましいが、両国は中国の無法を批判できる立場にある。実効支配があっても不法占拠は不法占拠だ。そういう概念が無い限り、世の中は武力で領土を奪うことが正当化される危険な世の中になってしまう。強盗に正当性はないのだ。盗られた方が諦めない限り。

④とは言え、南シナ海の島々は人の住めるような島々ではなく、実効支配の歴史も非常に浅い。何時自分達のものと宣言したかで全てを決める必要があるかは怪しいように思う。関係各国言い分があるのであって、外交交渉の余地はあってもいいだろう。(無人島を除く)陸地から距離等分もひとつの見識ではある。いずれにせよ、国際的な領土紛争における先例をベースに話し合うことも無駄な紛争を避けるためには必要なことだ。

簡単に纏めると、早い者勝ちの現行秩序において、中国は遅れてきた大国の立場にあると言えるだろう。かつての日本と同じような道を辿りつつあるように見えるということだ。独自の価値観を主張し国際社会と争うか、責任ある大国として無理な主張を諦めるかは中国に委ねられている。