ワニなつノート

今日の記事と去年の社説

障害者自立支援法:
「電動車椅子支給却下は違法」と提訴


毎日新聞 2013年02月26日 


 心臓病がある福岡県筑後市の小林奈緒さん(23)が、障害者自立支援法に基づく電動車椅子の支給申請を筑後市が却下したのは違法として、市の処分取り消しを求める訴訟を福岡地裁に起こした。

 訴状などによると、小林さんは生まれて間もなく先天性の心臓病「単心房単心室」と診断された。
本来なら二つずつある心房と心室がそれぞれ一つしかないため血液中の酸素が不足し、5分以上、100〜200メートル歩くと息切れが激しくなる。入浴も手助けが必要で、身体障害者手帳(1級)を取得している。

 06年施行の障害者自立支援法に基づく厚生労働省の規定は電動車椅子の支給対象者を「呼吸器機能障害、心臓機能障害によって歩行に著しい制限を受け、医学的所見から適応が可能な者」と定める。

認められれば、本人負担は原則購入費の1割になる。

小林さんは手動の車椅子も自分では動かせないため、11年、市に電動車椅子の支給を申請。電動車椅子が必要との主治医の意見書も出した。

 しかし市は12年、「日常生活が著しく制限されるとは考えにくい」として申請を却下。

小林さんは不服審査請求をしたが認められなかったため提訴に踏み切った。

 代理人の星野圭弁護士は「市は小林さんの社会参加の権利を侵害している。主治医の判断を尊重し、自立につなげるためにも電動車椅子を支給すべきだ」と主張。

 筑後市福祉事務所は「(支給決定の際に行われる)県障害者更生相談所の判定に基づき判断した。今後の裁判で反証していきたい」としている。

【蒔田備憲】

 障害福祉に詳しい竹端寛・山梨学院大准教授(障害者福祉論)の話


 同様のケースは他県でもある。

電動車椅子を使うのは甘えている、できるなら手動を使う方が良いというような、旧来の「自立更生」の文化に基づいた前例踏襲の判断を感じる。

病気のしんどさや生活のしづらさをきちんと聞き取り、行政と当事者が協議・調整できるようにすることが必要だ。



     ◇      ◇     ◇


社説:障害者雇用 
「合理的配慮」を職場に


毎日新聞 2012年08月04日 



 障害者雇用が変わる。
厚生労働省の労働政策審議会は民間企業の法定雇用率を現在の1.8%から2.0%へ引き上げる案を答申した。

障害者雇用を義務づけられる企業も「従業員56人以上」から「50人以上」となり、9000社以上増える。
国や地方自治体などの法定雇用率は2.1%から2.3%へ、
教育委員会は2.0%から2.2%となる。


 また、雇用義務の対象を身体障害者と知的障害者だけでなく精神障害者を加えること、国連障害者権利条約で定められた職場の「合理的配慮」を企業などに義務づけることを同省検討会は提案し、来年の通常国会に改正法案が提出される予定だ。

 企業にとっては厳しい内容に思えるかもしれないが、リーマン・ショック以前から障害者雇用は少しずつではあるが着実に伸びている。
特に知的障害者や精神障害者の伸びが著しく、大企業が障害特性に合った労働内容の特例子会社を作って受け入れるケースが目立つ。
就労を柱にした障害者自立支援法の影響も大きく、精神障害者の求職者数は急増している。今回の制度改革は当然だ。

 ただ、障害特性を理解しないまま厳しい指導を繰り返したり、人間関係の調整にまで配慮が行き届かないためにストレスがかかり離職するケースが多いことも指摘しなければならない。

障害者雇用に熱心な会社で働いていた発達障害者がストレスから自殺し、訴訟になった例もある。
雇用率だけでなく、定着率や「質」が一層問われることになるだろう。


 「合理的配慮」とは企業の過重負担にならない範囲で個々の障害特性に合った職場環境や支援を提供することだ。
独特なコミュニケーション、ものごとの順序や特定のものへのこだわり、感覚過敏などがある発達障害に配慮した環境や支援技術を備えた職場はまだまだ少ない。


合理的配慮は単に負担ではなく、障害のある従業員の労働能力を十分に引き出すためにこそ必要なのである。


 現在は雇用率未達成企業が国に支払う納付金が、達成企業への報奨金や補助金の原資にされている。
処遇の難しい障害者を積極的に受け入れている企業への補助金などはもっと手厚くした方がいい。
納付金制度の拡充だけでなく、一般財源からの支出も考えてはどうか。
福祉サービスを受けて生活している障害者が就労すれば、福祉側の負担がその分だけ軽くなる。


 これから発達障害や精神障害の従業員は確実に増えていくことを考えると、ハローワークや就労・生活支援センターの援助機能をもっと高めなければいけない。
就労移行事業所など福祉分野の資源も動員して働く障害者の支援に乗り出すべきだ。


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これは去年8月の社説だけど、自民党に変わって、どうなっているんだろ?

それと、やはり気になるのは、私が赤い文字にした部分、
《障害特性を理解しないまま厳しい指導を繰り返したり、人間関係の調整にまで配慮が行き届かないためにストレスがかかり離職するケースが多いこと》

《発達障害に配慮した環境や支援技術を備えた職場はまだまだ少ない》。

その理由は、ふつうの職場にいる健常者のほとんどが、「障害者」とふつうにつきあったことがないからであり、子ども時代から、「障害に配慮」する大人や社会のモデルを見たこともないからじゃないんだろうか。

子どもの時から、「分ける配慮」以外に見たこともない子どもが、大人になって、見たこともない、付き合ったこともない、その存在さえしらない様々な障害者に「配慮」する術や意味を、どうして身につけることができるだろう?

1979年の養護学校義務化以来、普通学校で学ぶ子どもは増え続けていたが、通級制度のころからまた特殊教育を受ける(分けられる)子どもは増え始め、特別支援教育になって、さらに分けられる子どもの数は爆発的に増えています。

子ども時代に、「分ける配慮」しかない環境の社会で、働く場に「一緒の配慮」を求めても、たかがしれているんじゃないのか。


アメリカではこども用の銃が売られています。
その社会で育った大人は、銃のない社会を拒みつづけています。

体罰を肯定する大人たちは、子ども時代、自分も殴られたけど「よかった」と言います。

子どものときに、正しいと教えられたことを変えることは簡単なことではありません。

民間の会社に、「共に働く」ことをあるべき姿として主張する人たちが、保育園から小中高大学、といった教育の場で、「共に学ぶ」ことこそがあるべき姿だと言わないのはどうしてだろう???
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