ワニなつノート

「ふつう学級でよかった」とは言わない(その2)

「ふつう学級でよかった」とは言わない(その2)


《「ふつう学級はかわいそう」が
生まれた時代》



「障害者運動のバトンをつなぐ」という本を読んだ。

第1章の小泉さんの文章を読んで、毎年、就学相談会で耳にする言葉がよみがえった。

「分からない授業はかわいそう」
「いじめられますよ」
「自己肯定感が持てません」


その言葉は「ヘイトスピーチ」の人の言葉ではない。
学校の先生の日常語。
校長先生の常套句。
専門家の専門用語だ。


「分からない授業はかわいそう」
「いじめられますよ」
「自己肯定感が持てません」

それらの「言葉」は、いつどこで生まれた言葉だったか。
その本を読んではっきりと思い出した。

それらの「言葉」が生まれた場所と時代。

私が子どもだったころを思い出した。

私が忌み嫌い、怖れ、恐がり、目にするたび心の中で石を投げつけていた人たちのことを思い出した。

子ども時代の私は、間違いなく差別のかたまりだった。


      ◆


生後一週間で「黄疸」にかかり、脳性マヒとなりました。
いわゆる「普通校」と呼ばれている地域の学校で、小学、中学、高校の12年間を過ごしました。

          ※

両親は、「健常児と同じように」が一番大事だと考えていたと思います。…。

何をするにも遅れてしまう私に対して、母親は常に「早くしなさい」「頑張ればできる」が口癖でした。

他の子供がすることは、なんでもさせました。

両親は、私の障害について全く理解はしていなかったと思います。

父親からは、「もう少しましにしゃべれんのか?」「お前のいう言葉はわからん」と、よく言われました。

脳性マヒの私は「そろばん塾」にも行かせました。

           ※

学校生活の中で、もっとも私を苦しめたのは、毎日毎日繰り返される「いじめ」でした。

言葉によるいじめ、暴力によるいじめ。
仲間外れ、無視など、いろいろありました。

私は前歯がほとんどありません。
これはいじめによる暴力の結果です。

いじめを受けていたことは、両親には話していませんでした。
蹴られてあざができていても、「ころんだ」と母親にはいつも言っていました。

でもさすがに、歯を折られた時にはおおごとになり、母親も心を痛めていました。
学校側とも話し合いがもたれました。


しかし、そんなことで、「いじめ」はなくなったりはしません。

おおごとになっても、私の日常は、何も変わりませんでした。


行く場所、行く場所でいじめは続きます。

学校内でも、塾でも、銭湯でも、プールでも、公園でも……。

人が集まる場所でいつも、私は怯えていました。

             ※

そうした経験を含めて、この健常者社会の中での障害者の扱いがいかなるものなのかを知った、学んだように思っています。

(『障害者運動のバトンをつなぐ』~小泉浩子 生活書院)


        ◇



《子ども時代に学んだこと》



小泉さんは1964年福井県の生まれ。
私は1960年新潟県の生まれ。
その時代の空気は、今も昨日のように私の中にある。

私より年長の人はもちろん、私と同世代の人もまた、小泉さんが「学んだこと」を学んで大人になった。

大人になって、教師になったり、医師になったり、文科省や教育委員会に勤めている。
そのほとんどは、健常者。

健常者として、「健常者社会の中での障害者の扱いがいかなるものなのか」を学んだ。

それ以外の、あり方を、学ぶことなく、大人になり、大人の健常者になって、いまの健常者社会を作っている。

だから、その「健常者社会の中での障害者の扱い」はまだまだ変わらない。

特に、子どもに対しては、自分の学んだ経験を元に自分の信念のように語る。

「分からない授業はかわいそう」
「いじめられますよ」
「自己肯定感が持てません」


実際のところ、その言葉が語っているのは、私が子どものころにあまりにふつうだった「いじめと差別と隔離」の記憶が、強力に植え付けた固定観念でしかないのだ。


その古い固定観念が、いまも社会の主流で流通している。
だから、いまも若い親が惑わされる。

目の前にある、保育園幼稚園での子ども同士の姿をみて感じていることと、古い固定観念が違うことに惑わされている。


目の前の子どもたちこそが希望であり、未来だ。


(つづく)
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