エピソード2015 クリスマス
3年前の今日、
クリスマスイブにホームに来た子がいた。
よりによって、今日、ここに。
いや、ようやく、今日、ここに。
いやいや、それは私の上から目線。
それにしても、世間のクリスマスのにぎわいとの落差は重い。
クリスマスの夜に帰る家とあたたかく迎えてくれる家がない子にとって、
たどりついたここは、
ほんとうは居たかった場所じゃない。
本当は…。
本当なら…。
それも、子どもの気持ちではない。
私の上から目線。
本当も何も、これが現実。
これが本当。
そうでなきゃ、この子のいまを生きている姿も「本当なら…」という、どこか別の物語にまるめこまれる。
これが、この子の本当。
今夜、世界中の誰よりも、生きるためにここにいる。
自分の人生を生きている、この子が、ここにいる。
考えるまでもなく、そんなふうに思える自分になりたいとおもう。
3年前のクリスマスイブにここに来た子は、もうここにはいない。
17でここにきて、二十歳の誕生日をここで迎え、
先月ここを旅立った。
ここで暮らした3年の月日が、いつか彼女の人生のなかで、
「3年前のクリスマスプレゼント」だったと思ってくれるとうれしい。
この仕事を続けるのに、そんな妄想は大事だ。
なぜかといえば、今年のクリスマスにもまた新しい出会いがあるから。
年の瀬も押しつまったこの時期に、帰る家を手放す子がいるから。
だから、まだ会ったことのないその子が、
いつか幼い子どもと一緒にあたかかい家で迎える未来のクリスマスの夜をおもう。
その日のために、ここが安心して休める場所であるとうれしい。
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