今回のyu君についての報告を読んで、私が一番納得いかないところは、yu君を警察に連れていったことです。
「警察に行って、どう対応すればよかったのか」、と聞かれたら、その問いが間違いだと私は答えるでしょう。
今回の場合、行ってはいけなかったのです。
なぜ行ってはいけなかったか。
それは、Kさんがyu君の親だからです。
Yu君の親として、すべきことと、してはいけないこと、を考えた上で、動き始めるのでないと、「社会の常識」と「差別」そして「健常者としての自分」に巻き込まれて大切なことを見落とします。
親としてまずすべきことは何か。
親としてできる大切なことは何か。
それは、無条件に子どもの味方であることです。
相手が学校であろうと、警察であろうと、病院であろうと、法律であろうと、関係ありません。
そのための就学時健康診断の拒否であったはずです。
そして、「してはいけないこと」は、子どもの気持ちを飛び越えて、親として動くこと、です。
子どもの気持ちを聞かず、社会の常識や世間のやり方で合わせることです。
まして、子どもと言っても、高校を卒業した大人です。
まず、そのことを自分に確認できてから、その他の事情を考えていけばいいのです。
今回の場合、恐い思いをした中学生の女の子の心配をしていますが、それはKさんの役割ではありません。
その女の子には、ちゃんと相談できる両親がいて、ちゃんと警察にまで一緒に相談につきそってくれる両親がいるのです。
「そうは言っても、現実には…」という気持ちは分かります。
私がこう言ったからといって、割り切れるとは思いません。
でも、早い段階で、誰かとこういう話をしながら動いていれば、「障害を含めて理解してもらって、トラブルを解決しなければ」ということだけに走るのではなく、せめてもうちょっとyu君側に立ち止る機会が増えたのではないかと思うのです。
今まで、kyoちゃんの入学や、Hr君の転校の時には、何十回もメールや電話で話をしました。ちょっとしたことでもメールがきたり、電話がなりました。
「課長がこんなふうに言ってきたけど、これってどういう意味かな?」
「教育委員会から電話があって、こう答えたけど、よかったのかな?」
そのほとんどは、本当に難しい問題ではありませんでした。
でも、「人の大切な子ども」だから、些細なことでも嫌な思いをせずに転校できるように、入学できるように、という、Kさんの丁寧な気遣いが、「わが子」のことになると忘れられています。
ある日、「朝、駅までの道を走ったことがあるか?」「なぜ走ったのか?」と聞かれ、「あなたが走ったことで、恐い思いをした女の子がいるから、警察に行って説明してこよう」。
自分の親にそんな話をされても、私は絶対に警察には行きません。
親を味方だとは思えないでしょう。
走ったのは、「暗い夜道」や「人気のない公園」ではありません。
走ったのは、「真夜中の時間」ではありません。
通勤のために、駅に行く途中の道です。
朝の時間、通勤する大人や通学の子どもがたくさんいる時間帯です。
そこで、走って何が悪い?
「でも、現実に恐かったと訴える中学生がいる」?
それは、中学生の親が、フォローすることです。
警察はこう言っているのです。
「また相談内容から、追いかけられたけどその後に声をかけられたとか、何かをされたとかはない。」
「今回相談を受けた時に、近隣の小・中学校に不審者情報を出して、同様に「追いかけられた」という子がいたか照会をかけましたが、誰もいませんでした。」
だったら、「追いかけられた」というその状況を、警察はもっと具体的に調べるべきです。
一度でも、yu君が走っている姿を、自分の目で見るべきです。
どんなふうに走るのか、誰かを追いかけて走るのか、急いでいて走るのか、それとも、ふらっと風にさそわれて走るのか。それくらい調べればすぐにわかることです。
Yu君が「障害者」でなければ、警察の対応は違ったはずです。
中学生の安全も人権も大事です。
だからこそ、yu君の人権も大事にされるべきなのです。
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kawa
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ありんこ
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