入学相談会を終えて 2010年2月
私が話すことは、毎年毎年、いつもいつも同じこと。
小夜さんから聞いた、「一緒がいいならなぜ分けた」という話と、
「いい所などどこにもない、いまいる所をいい所にしなきゃね」、
そして「子どもを分けてはいけない4つの理由」。
これで、お母さんお父さんが「事前アンケート」に書いてくれる
「聞きたいこと」にほとんどすべて答えることができます。
私が手の平ににぎっているカンニングペーパーは、
もう20数年、同じです。
昨日も、相談にこられた22家族
(1年生一人・2年生一人・6年生一人、
1才の子ども一人・年中さん16人・年長さん二人)
のほとんどの方に、小夜さんの伝えてくれる言葉が、
砂漠にふる雨のように吸い込まれていくのを感じました。
北村小夜さんが、中学校の特殊学級の担任として、
初めて教室に入った日、
生徒のH君に「先生も落第してきたの?」と聞かれたのは、
1965年のことです。
私が5才で、保育園で廊下に立たされていたころのこと(-。-)y-゜゜゜
あれから45年。
今は街中、どこに行ってもエレベーターがあります。
車いすで電車もバスも飛行機もふつうに乗れるようになりました。
バリアフリー、ノーマライゼーション、共にと、
行政も学校も言います。
差別はいけない。
「障がい」があっても地域で共に生きていけるような社会を、
と言われるようになりました。
わざわざ障害という漢字を「がい」とひらがなに変えてまで、
共に生きる社会をと言います。
そのことに、表立って反対する人はそうはいません。
でも、それならなおさらのこと、
子どもたちだけが、その一度きりの子ども時代に、
なぜ分けられなければならないのか。
「一緒がいいんなら何で分けた?」
45年前の、H君の質問にちゃんと答えられる人に、
私はまだ一人も会ったことがありません。
学校にも、教育委員会にも、文科省にも、どこにもいませんでした。
どんな専門家もそれに答えることはできないでしょう。
なぜなら、誰もが共に暮らせる社会が本当にいいと思うなら、
子どもを分けてはいけないからです。
子ども時代に分けておいて、
「共に暮らす社会がいい」と教えることなどできないからです。
「一緒がいいなら、分けてはいけない」のです。
だから、「一緒がいいんなら何で分けた?」
という質問に答えられる人はいません。
正直に、「一緒がいいとは思うけど、
一緒が無理な人間もいるんだよ」と答えるか、
もっと正直に、「一緒じゃめいわくなんだよ」
と答えるしかないでしょう。
でも、その答えは、「一緒がいい」を否定しているので、
やはりH君への答えにはなっていません。
という訳で、まだ読んでいない人は、ぜひどうぞ。
20世紀の名作古典の一つです。
『一緒がいいならなぜ分けた』
北村小夜 現代書館
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