◇第2章ひとくくりにしないで
「就学相談に関わる方へ」
あなたが相談を受けている一人ひとりの子どもについて、できるだけ知るのはいい考えです。ちょっと考えてみてください。一人ひとりの子どもについて本当に何を知っていますか?以下の質問にいくつ答えられますか?
○その子はどんな家庭環境で育ちましたか?
○お母さん、お父さん、おじいちゃん、おばあちゃん、兄妹について、どんなことを知っていますか?
○その子の、これまで人生において大切な人は誰ですか?
○その子は、保育園、幼稚園ではどんな生活を送ってきましたか?
○その子が保育園、幼稚園に入るときには、どんな苦労がありましたか?
○その子の好きなこと、嫌いなことはなんですか?
○その子が得意なことはなんですか?
○その子が大切にしているものはなんですか?
障害のある子どもの就学を考えるとき、学校の先生や教育委員会の担当者は、まず「障害の種類と程度」をみます。
発達検査、言語検査、知能検査の数字をみます。
障害名や検査の数字は、その子が「健常児」でないことを示します。
でも、そんなことは、ほとんどの親にとってわかりきったことで、なんの意味もありません。
親が知りたいのは、その「障害名」でよばれる子ども、検査の「数値」で測られたその子どもが、子ども時代を大切にされ、意味のない競争や比較を強いられることなく、安心して学校生活を送ることができるためには、どういう準備や配慮が必要なのかということです。
○その子は、幼稚園がお休みの日には、どんな風に過ごしていますか?
○その子は、スイミングなどの習い事をしていますか?
○その子が好きなアニメや絵本はなんですか?
○その子は今までに、入院したり、一時的に施設等に子どもを預けたられたことがありますか?
○その子の両親は、地域で、相談できる人がいますか?
○その子が、幼稚園で大好きなお友達の名前はなんですか?
○その子が、幼稚園で大好きな先生の名前はなんですか?
○その子が、一年生になることを楽しみにしていることは、日常のどんなことば、仕草から
わかりますか?
○その子にとって、「ピカピカの一年生」とは、どういったイメージですか?
これらの質問の答えを、もしあなたが知らないのならば、少なくともいくつかの質問に答えられるように努力してみてください。時間をかければ、あなたが担当する子ども自身が教えてくれることもたくさんあるでしょう。
6歳の子どもにとって、小学校入学、一年生になるということは、ちいさな「社会人」への一歩です。
お母さん、お父さんと離れ、家族とは別に、自分一人の生きる場所と所属を手に入れるということです。
大人からみれば、保育園、幼稚園で過ごすことと、一見変わりないように思われますが、子どもにとっては、その違いは明らかです。
なぜなら、義務教育という国の制度、「一年生」への社会の祝福とまなざし、小学校へ送り出す側の幼稚園、保育園の先生たちの祝福とまなざし、それらすべてが、子どもたちに注がれています。障害のある子どもだけが、その枠外にいるなどということは考えられません。
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