偶然、出てきた石川先生のプリント。
これは、ここに挟んでおけっていう宇宙からの「指令」だな(o|o)
私がまだ20代のころの、神戸新聞に掲載された一文です。
□ □ □
「少年期」 石川憲彦
親は子に「できる限りのことをしてやりたい」と願い、「何をしてあげることが未来の人生への最高の贈り物になるのだろうか」と常に考えています。
しかし失敗しようと、未成熟といわれようと、自分一人の力で何かをやりとげたいと願う子供たちにとっては、この親の願いほど、うっとうしいものはありません。
近代的な社会では、この独立の時期を反抗期と呼び、成長にとって不可欠の一段階と考えてきました。しかし今日の日本の反抗期はもっと深刻な問題を抱えているように見えます。
明治以来、多くの親は「教育を受けさせてやること」が最大の贈り物だと考えてきました。浪費すればすぐに消え去る富よりも、いつまでも残る財産だと考えたからでしょう。
確かについ最近まで、幸・不幸は別にして、社会的地位の確保という点では、学校教育は大きな財産になり得たといえるでしょう。
しかし、この考え方は少しずつゆらぎ始めています。あまりにも社会の流動性が激しくて、昨日良かれと思って教えたことが、今日良いこととは限らないのが、今の社会であり教育です。
親も、教師も政治家も、明日のために何を教育していってよいのか本当に分からなくなってきています。
教育を信じていないが、しかし教育のほかに贈るべきプレゼントを見いだせない親。
そんな不安感を隠して贈られるプレゼントには縛られたくない子供。
単なる独立期として反抗期があるだけではなく、自ら信じきってはいないプレゼントを子に押しつける
「親の不安感」への不信が反抗期を深刻化させているのです。
では、混乱した学校教育のほかに何をプレゼントできるのでしょうか。
私は流動性がかくも激しい世の中では「どんな環境にあっても、自ら自分を納得した形で保てる力」が一番大切だと思います。
だが残念なことに、この力は教えることができません。教えようがなく、ただ、近しい大人の態度から自ら学び、身に備えていくものなのです。
子供のために良かれと全力を尽くす親や教師は失格です。相手のために生きようとすれば「自ら自分を納得した形」など保てるはずがありません。
恵まれた環境の中で、その環境を壊すまいと、失敗を恐れている大人も失格です。
親は、すでに、子供に“生命”をプレゼントしたのです。贈ってしまったプレゼントに注文をつける未練がましさや、この最高のプレゼントにさらに何かつけ加えて贈ろうとする高慢さは捨てた方が良いのです。
その代わり自分にも贈られた生命をどう楽しませようか、どう深まらせようかと、利己的な謙虚さを取り戻しましょう。「親の切なる願い」をわが子に対してあきらめたとき、お互い認め合い、守り合っていける新しい道がみえてきます。
この道の発見こそが、常に最高のプレゼントとなっていくのです。
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ありんこ
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