ようこそ就学相談会へ2017(その2)
《就学相談会と「事件」のこと ①》
今年の就学相談会の準備を始めて、ふと気づいた。
相談会は6月と7月だから、「事件」から一年後、ということになる。
「事件」について、私は「ここ」に何も書いていない。
「私」が、「誰に向かって」、「どんな言葉」で話せばいいのか分からなかった。
「ここ」で、私は「ふつう学級」で子どもを守り育てたいと願う人と、思いや情報を共有したくて、言葉をつづっている。
「事件」に関しては報道以上のことを私は知らない。
被害にあった人を誰も知らない。
名前も顔も。
言葉が見つからなかった。
事件から半年が過ぎて、いろんなテレビ番組を見、出版された本や雑誌を読んだ。
殺された人々の名前や人生はいまだ明らかにされていない。
ただNHKの番組で、施設の元職員の人たちが、亡くなった人の名簿を作成し、その人たちの生きていた記録を残そうとされていることを知ったとき、少しほっとした。
当たり前のことだが、マスコミが名前を公表していないからといって、その人たちが「誰であるか」を「誰も知らない」訳じゃない。
遺族だけでなく、一緒に生活していた人たちは「誰」がいなくなってしまったかを知っているし、身近な人たちは亡くなった人全員の名前も顔も人柄も覚えている。
そのことを語り合う人たちがいる。その当たり前のことがみえて、少し落ち着いた。
そこから、自分の思いを少しだけ言葉にできるようになった。
そして、今年の就学相談会の準備を考え始めたとき、「事件」から一年後に、私は6才になる子どもたちの親の前に立つのだと気づいた。
その時期、一年前の事件について「なにも言葉を持っていない」私というのは、あまりに不自然な気がした。
「障害者施設」で、27人の人が重軽傷を負い、19人の人が殺された。亡くなったのは19歳から70歳までの女性10人と、41歳から76歳の男性9人。
その事件の一年後に、障害のある子どもの「就学」について、話を聞きに来る「親」たちへ、何も言葉を持っていない、というのはないと思った。
この社会は、障害があることで殺される、狙われる、そういう危険な社会なのか。
子どもに障害があると、そういう心配をしなければいけないのか。
どうすれば、子どもを守れるのか。どうすれば、障害のある子どもたちが安心して生きていける安全な社会になるのか。
そのことについて語る言葉を持たない人に、「子どもの学校」について相談する人はいない。
そう思った。
だから、言葉を探してみようとおもう。
あの事件を、私は、どう感じて、生きているのか。
就学相談会で出会う人に向けて、言葉を探してみようとおもう。
生まれてきた大切な子どもに、どんな障害や病気があったとしても、その子が自分の人生を生きられるように。
その子が安心して子ども時代を仲間と過ごし、自分の人生をまっとうできるように、応援するのが大人の仕事だと、私はおもう。
どんな生き方をするのか、何をしたいのか、それは私には分からない。
どんな苦労があるのか、どんな幸せがあるのか、それは私には分からない。
ただ、子どもが自分で自分の人生を歩めるようにと願う。
一人一人の子どもが歩む先には、いろいろな場所がある。
病気や障害があることで、そうでない子どもが一度も訪れる必要のない場所に行くことはあるだろう。
だけど、そのことと、子どもの人生を「分けられた場所」「障害児だけに限られた場所」にだけ狭める「制度」を大人が決めるのは、違う。
生まれ育った家の地域にある学校。
その地域で生まれ育った子どもが6才になると、みんなが通い、遊び、学び、生活する場所。
そこには、子どもを守る大人がたくさんいる。
お互いを守り合い、育ちあう仲間がたくさんいる。
「ふつう学級」とは、ただそれだけの場所だと、私はおもう。
ひとつひとつ、ゆっくり考えて、言葉にしてみたいとおもう。
◇
《ふつう学級のための就学・就園 相談会》
2017年6月25日(日曜日)柏市・パレット柏
2017年7月9日(日曜日)千葉市・きぼーる
2017年9月(予定)
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