ワニなつノート

青く染まった水槽 (Naoちゃん・小5の1)

青く染まった水槽 (Naoちゃん・小5の1)

あーちゃんの《ザリガニ》で、
《Naoちゃんの青い水槽》を思い出しました。

このブログで、Naoちゃんが二人出てきます。
今回のNaoちゃんは、
「水着にゴーグル」や「5人のアンパンマン」で、
ワニなつ大賞を独占しているNaoちゃんです(>_<)


    □     □     □


青く染まった水槽

Naoは5年生になりました。

新学期が始まり2週間ほど経ったある日、
私は担任に呼び出されました。

現れた担任の手には小さな段ボール箱が。
その中にはゴロゴロと小さな容器がいくつか入っています。
先生の指先が青く染まっているのに気づき
「(絵の具‥‥? 絵の具で何かやった?)」と思っていると、
先生が口を開きました。

「Naoちゃんが、金魚とメダカの水槽に
これを全部入れちゃったんです」

「‥‥?!」

ゴロゴロしていた容器は、金魚やメダカのエサや、
飼育に必要な薬品だったのです。
その中でも、病気にならないための薬品は青い液体で、
それを全部入れてしまった水槽は、
まるで青い絵の具を100個ぐらい入れたような
真っ青な水になってしまったそうです。

どおりで先生の手が青く染まっているわけです。

金魚とメダカは先生が買ってきたものですが、
水槽とポンプはクラスの生き物係アヤちゃんが
家から持ってきたものです。

昆虫などの生き物が大好きなアヤちゃんは
率先して生き物係となって、去年からずっと
金魚とメダカの世話をしてきたのです。

Naoによってひどい目にあわされた金魚とメダカは、
アヤちゃんはじめ、みんなの懸命な救出活動により、
幸い一命を取り留めました。


「そういう事なのでKさんに電話してください」

担任からのこの言葉‥‥。
訳すと、すなわち〈アヤちゃんの親に謝ってください〉です。

Naoは今までにも、いろんな事をやらかしてくれましたが、
私は一度も相手の親に電話をしたことがないのです。

Naoがクラスの子の夏休みの作品を次々と壊してしまった時も、
見せてもらったキーホルダーを分解して壊した時も、
借りた修正テープを一気に使いきってしまった時も、
クラスの子15人分の水筒を隠してしまった時も、
それはNaoと相手の子の問題で、
やってしまったNao本人が相手の子に謝ればいい。
学校で起きたことは学校で解決すればいい。
そこに私が出ていって謝る必要はないと思うのです。

もちろん、授業参観などで相手の親に会った時には
「この前は……」とか「あの時は……」
と話すのはありだと思いますが。
 
アヤちゃんとは去年もクラスが同じで、
お母さんとも何度か話したことがあります。
電話をするのは私の意に反することですが、
初めて言われた「電話してください」という
担任の言葉に心は揺れ動きます。

私は意を決してアヤちゃんの家に電話をしました。

「アヤちゃんから聞いてると思うけど…」と切り出すと、
「え?聞いてないよ~なになに?」と、
アヤちゃんのお母さんからは予想外の返事。

「実はアヤちゃんが大事にしてる金魚とメダカを……」
と言い出したところで、
「あっ、その話? それなら聞いてるよ。
えっ? それで電話してきたの~?やだぁ、なんで~?」

「いやぁ、アヤちゃんに申し訳なくて…
それに、実は先生から電話するように言われて…」
と正直に話したら、
「あのね…」と、アヤちゃんのお母さんは話し始めました。

「私ね、金魚すくいで取ってきた金魚を、すぐ死なせちゃうの。
今まで何匹買ってきたか分かんないけど、
うちに飼われた金魚は必ず3日で死んじゃうんだ。
だから、アヤには『学校で金魚を飼えることに感謝しなさい』って、
いつも言ってるの。
『今日Naoちゃんがやったことは、
Naoちゃんが悪いんじゃない。お母さんが悪いの。
金魚を3日で死なせちゃうお母さんが悪いんだからね』って、
アヤには話したの。

今日、アヤから金魚の話を聞いて、
それをやったのがNaoちゃんだって聞いた時、
私、ほっとしたんだ。

ほっとしたっていうのは変だけど、
悪意があって生き物を殺そうとしたのなら許せないけど、
やったのがNaoちゃんだって聞いて、
それなら決して悪意があってやった訳じゃないって、
すぐに思ったから。

『Naoちゃんの成長なんだよ。
今日の出来事は、Naoちゃんの成長に必要なことだったんだよ』
って言ったら、アヤは納得してた。

だから、アヤは大丈夫だよ。

それよりアヤは、冷たいというか、思いやりがないというか、
気がつかないところがあって、
Naoちゃんがイヤな思いをすることがあるかもしれない。
けど、Naoちゃんがキライなわけじゃないの。
気がつかないだけで、言われて初めて分かることが多いから、
もし、何かあったら遠慮なく言ってね」
 
アヤちゃんのお母さんは、さらに続けます。

「Naoちゃんとは、きっと中学も一緒だよね。
これからもずっとよろしくね!」
 
どう考えても、誰が見ても、悪いのはNaoという状況なのに、
アヤちゃんのお母さんの、Naoを思いやるこの言葉の数々…。

Naoの悪事を詫びるつもりでかけた電話で、
しかも、かけようかどうしようか迷っていた電話で、
予想もしなかった思いがけない展開に、
私は涙が溢れてきてしまいました。

心が広いとか、懐が深いとか、
そんな言葉では言い表せないほどの優しい人柄にふれ、
こんなにもNaoのことを理解してくれる人がいるということに、
感謝の気持ちでいっぱいになりました。


後日、5年4組の教室で、
元気に泳ぎ回っている金魚とメダカを見ました。

うっすら青く染まった水槽を見ながら、
あの日この水槽を囲んで、いろんなドラマがあったんだなぁ……と、
想像を巡らせました。

Naoがやったことは確かに悪いことだけど、
そこで得たものは大きかったと思います。

アヤちゃんのお母さんの言葉を借りれば、
あの日の出来事はNaoの成長には必要だったことで、
親の私にも必要な出来事だったのかもしれません。
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