【ようこそ就学相談会へ 番外編】
《なっちの研究・序章》
なっちが高校を卒業する前後のこと。
「この子が、ふつう学級と普通高校と、この親のもと」で育たなかったら、この「なっち」にはならなかったと確信する場面がいくつもあった。
確信は、私が8歳のときに分けられていたら、私のこの人生が丸ごとなかったという真実と重なる。
分けられていたら、このすべての出会いとつながりと、生きる喜びは存在しなかった。
もちろん別の人生にも出会いも喜びもあるだろう。
でもそこには、8歳までの私とのつながりが、ない。
■
ふと、《なっちの研究》をしてみたいと思った。
それとともに、私となっちを助けてくれたすべての子どもたちへの感謝の思いが湧いた。
8歳の自分となっちの間にも、私はたくさんの子どもと出会ってきた。
その子が一年生になる前に出会って、中学生になり、高校生になり、20代、30代、40代までを見てきた。
そんな中で、なっちとの14年とのつきあいで確かめられたことがある。
■
私もなっちもやっちも、手のつけられないクソガキのままじゃなく、ちょっとはましな大人になり、信頼できる人と出会いつながるために、必要だったもの。
それは、「相手を変えようとするやり方や人」とは別の場所で生まれる何かだった。
私が出会ってきた子どもたちの中に、例外がない。
■
言葉にすればこんな感じ。
「わたしの人生の初めのころ、出会う人はみんなわたしに変わるように言った。
でも、あなた方は違った。
わたしを無理に変えようとはせずに、わたしの言い分を聞いてくれた。
だから、わたしも、人のことばを聞けるようになった」
あるいはこんな感じ。
「お母さんが学校や病院に呼ばれて話しているとき、わたしはいつもその場に存在していないかのように扱われた。
でもここではまったく違った。
わたしは、ここにいるみんなと同じに、確かにここに存在していたし、ちゃんと尊重されていた。
私は、学校や病院でお母さんが話すときより、この場所で話すのを聞いているのが好きだった。
お母さんの話は、わたしが学校で失敗して怒られことや、困っている話が多かったけれど、それでもここにいると、私はお母さんがどんなに私を大切に思っていてくれるかを感じられた。」
■
《「分からない授業はかわいそう」の話》
「分からない授業はかわいそう」という言い方は、北海道から沖縄まで全国共通です。
そして、ふつう学級で豊かに学んだ0点の子が、「高校に行きたい」という学ぶ意欲を示すのもまた、北海道から沖縄まで全国共通です。
もし、「かわいそう」が真実なら、こんなことは起こらないでしょう。
言葉を話さない子、文字を読まない子が、自分の意志で、何年も浪人しながら、自分の希望を貫くために、春になるたびに「受検」に向かうのです。点数が取れないことは、分かっていて、です。
このことは、私たちにとても大切なことを教えてくれます。
一つは、「分からない授業はかわいそう」が真実ではないということです。
むしろ、「分からない」ことがあるからこそ、子どもは学びに行くのです。
安心できて、くつろげる状況で、たくさんのことを学び、つながり、成長した自覚が生まれる。
できないこと、苦手なことを、責められず、ばかにされず、ときに場違いな発言もおもしろがられ、笑いに変えてくれる仲間がいる場所。
そうした安心のある所で、読み書きや計算という、勉強することもその土台の上に育まれていることを、誰よりも学んできたのが、この子たちだった。
子どもたちの学びのゴールが、卒業や、就職することよりももっと先にあるなら、もっとゆっくり時間をかけさせてあげるべきなのだ。
学校を卒業するその先に、障害のある姿のまま、安心と信頼と人とのつながりの中で、豊かな人生を送ることがあるなら、6歳の子どもへの要求はもっともっとゆるやかであっていい。
「45分座れるか」、「ひらがなが書けるか」、「一人で食事ができるか」、「一人でトイレに行けるか」、「言葉が話せるか」と、6歳の子どもに問う前に、私たちは何のためにそんなに急いできたのかと、振り返ってみることだ。
《なっちの研究》は、そうしたことを、すべて含んでいて、私に何か大切なことを気づかせてくれる予感がする。いつか、まとめてみたい。
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