≪はじめに≫
障害をもつ子どもが普通学級に入ると、「先生が困ること」がよくある。
昔は、その先生が困ると言うことに、
どう対応しようかとエネルギーを使ってきたが、
最近は概ねどんな場合もたいしたことはないと思うようになった。
実際、「入学式に参加できない」から始まり、
学校で泣いたり、騒いだり、教室から飛び出す。
職員室で先生たちの机の引き出しを開ける。
事務室にいってパソコンを触る。
冷蔵庫を開ける。
そういう入学早々の困った「行動」があっても、
それはむしろ当たり前で自然なことだと思えるようになってきた。
4月の入学式。初めの一週間。
5月の連休明け。一学期。夏休み。
9月。冬休み。3学期。2年生…。
春夏秋冬、子どもはしだいに安定してくる。
(周りも安定してくる。
一番後から安定するのが、先生と親。)
「問題行動」と先生や親が思う行動は、
時間が経てば「落ち着いて」くるのだが、
その理由が先生にも計りかねる場合が多い。
こういう対応、こういうきっかけ、
こういう対応で落ち着いてきたと、
心当たりのある場合がある一方で、
先生自身にもよくわからないことも多い。
毎年そういう話を繰り返し聞いていると、
「子どもが落着く」かどうかは、
子どもの「障害」の問題ではなく、
「そこ」にその子どもを丸ごと受け入れる空気があるかどうかだと思えてくる。
では、そのような空気、
「あたりまえにそこにいることを、いるだけを肯定する空気」)は
どうしたらできるか。
それは、いわゆる「問題行動」を「問題」として、取り上げない、
ということだろう。
ことさら、「指導・矯正・訓練・適応」することを子どもに迫らない。
専門家に丸投げしない。
まだ、この社会のルールや、多くの人がどのような基準価値観で、
どのようなときに、どのような行動をするのか、
そうしたことを知らないこの世の新入りなのだ。
しかも、そうしたことを、「理解」「認識」するのに、
ハンディがあるのだ。
ゆっくり、おおらかに見守るしかないではないか。
この子たちが、初めて訪れる小学校という場所
・45分という授業・
一日の集団生活という「枠」のなかで、
混乱や戸惑いがあって当然だろう。
そこで、
「この子には、私よりいい先生、いい専門家、がいるに違いない。」
「この子のためには、ここじゃない、もっといい場所があるんじゃないか。」
「この子はここにいない方がいい。いるべきではない。」
「その方が、この子のため。」
そんな「思われ方」そのものが、うっとうしいと思うだろう。
ときに、子どもが黙ってうなずくしかないこと、
それを本人の意思などと呼ばないように。
そういうケアの姿勢が、あるか、ないか、が分かれ目になる。
それは言い換えれば、子どもの「障害」だけに目を奪われることなく、
ただの「ひとりの子ども」として見つめる姿勢があるかどうかということだ。
それに、「分かろうとすること」にこだわらないこともまた大事なことだ。
いくら子どもの立場に立って、
「イヤ・恐い・わからない・不安」を考えようとしても、
やはり分からないことはたくさんある。
後になってようやく「ああ、そうだったのか」と納得することもあるが、
「分からない」ことの方が圧倒的に多い。
「訳もなく」「何もしてないのに、突然」というような時にこそ、
「私には分からないけど、
きっとこの子には、何か理由があるんだろう」という
受け止め方を自然にできるかどうかが、
子どものケアに欠かせないことだと思う。
毎日同じ場所、同じ仲間、同じ空気、
そこでの日々の生活の繰り返しが、
「理解」を超えて、ただの日常の風景になる。
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