☆
セーラームーンにあこがれて伸ばしていた
長い髪を切りたいとニィが言いだした。
ほたるちゃんやククリみたいな髪型にしたいのだと言う。
ふだんは私が切ってあげているのだが、
今回は美容院に行きたいという。
ニィが美容院に行くのは、これで二回目。
かみさんと一緒にうれしそうに出かけた。
美容院の受付で、「幼稚園、行ってるの?」と声をかけられ、
ニィはかみさんの顔を見た。
「春からね~」と言ってもらって、ほっと一息。
それから、一人で椅子に座った。
髪を切ってくれたお兄さんとニィの会話。
「何才?」
「4さい」
「幼稚園、行ってるの?」
「うん」
「なに幼稚園?」
「みどりようちえん」
「何組?」
「ももぐみ」
「バスで行ってるの?歩いて行ってるの?」
「あるいて」
「お母さんと?」
「うん」
「今日はお休みなの?」
「うん」
幼稚園をやめてから、
そのことをあまり重く感じないようにと気楽に話してきた。
ニィも「ようちえん、やめちゃったのぉ」といろんな人に話してきた。
おばあちゃんや親の知り合いの人には気軽に言えても、
初対面の人には気をつかうのかな、と思ったりもした。
美容院からの帰り道、かみさんがニィに聞いた。
「いやじゃなかった?」
ニィは機嫌よく答えた。
「おにいさん、やさしかった。
また、かみ、のびたら、ここにきてきってもらうの」
「そうね」
「おとうさん、へたくそだから」
「そう‥ね」
ニィは、やさしいお兄さんが困らないように、
そして、ちょっとよそいきの答えをしていたんだろうな。
☆
幼稚園・年少組の最終日。
「ちょっと、みんなのかお、みてくる」
そう言って、ニィはお昼前に出かけていった。
バレンタインデーに先生に届けてもらったチョコレートの
お返しのクッキーをしっかりと持って。
久しぶりの幼稚園の門の前で、一瞬立ち止まったが、
園庭に出てきた友だちの顔をみて元気になった。
先生と手をつないで走り、
「ゆりちゃんはこっちで、じゅんちゃんはこっち…」と
遊びをしきってもいた。
一人帰り、二人帰り…、結局ニィは一番最後まで遊んで、
ついでにみんなと同じ記念品までもらって帰ってきた。
「だめだ、だめだとおもっていても、
やってみれば、なんとかなるもんだね」
帰り道、ニィはそうつぶやいた。
3~4歳の間に、ニィはいっぱい楽しみながら、
悩みながら、苦労して、
こうして生きていく力をつけて大人になってきたんだなぁ~。
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