ニィの年少組の一年間のことを振りかえってみて、
いま考えているのは「ふあんのひろがり」というイメージです。
「何か」不安なものやことが、実体としてそこにあるのではなく、
自分のからだに何か、≪ふあんのひろがり≫が湧きあがるのを感じる…。
だから、「理由」を聞いても、言葉で答えは返ってきません。
それは子どもがまだ小さくて、
ことばでうまく説明できないからではありませんでした。
また子どもが、障害のために、
ことばが遅れているからではなかったのです。
ニィが、年少組の最終日につぶやいたことば。
「だめだ、だめだとおもっていても、
やってみれば、なんとかなるもんだね」
そう、一年間が終わってみてはじめて、
「幼稚園の年少クラスの一年間という経験」が、
娘の了解と納得のなかに、ゆっくりと収まったのでしょう。
小学校1年生の運動会は、一日中教室から出られなかったやっちゃんが、
5年生の運動会の日には、
すべての種目に当たり前のように参加したことを思い出します。
『動物感覚』という本に、
「動物と人間は膨大な量の観察学習をしなければならない」
と書かれています。
その通り、子どもには「膨大な量の観察学習」が
ほんとうに大事なことなのです。
たとえば、娘のようなつまずきの場合には、
「先まで見通しを持ちたいという気持ちがあるから…」とか
「慎重な性格だから…」というような説明が考えられます。
でも、障害児と言われるやっちゃんの場合には、
単に「こだわり」とか「障害の特性として見通しが悪い…」
という説明をされてしまうでしょう。
でも、娘もやっちゃんも、その「ふあんのひろがり」は同じです。
「自分では経験したことのない状況で、
分かっているつもりのこと、大丈夫なはずの自分の心に、
予想外に≪ふあん≫がひろがっていく…」
そんな気持ちなのだと思います。
子どもはみんな、そうした「ふあんのひろがり」を、
端から少しずつ手繰り寄せながら、「じぶんで」確かめながら、
少しずつ「だいじょうぶ」を自分に語りかけているのです。
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